回顧録(5) ポルシェ911ターボ(930) 当時の評価、いまの感触は?

公開 : 2017.08.18 16:40

完ぺきなコンディションに酔いしれる

911のフロントの挙動は、前方の状況をポジティブかつ的確に把握できる状態と、初心者マークを付けたドライバーのように疑心暗鬼に陥り綱渡りをしているかのような緊張感に襲われる状態との、極端なまでに細い線を行きつ戻りつする。

最高の気分に浸れるか、車輪がフラつくスーパーのカートのように感じるかは、個体のコンディションにもよる。ノーズが軽く、フロントサスのスプリングレートが高すぎることは信頼感を低下させ、ホイールバランスの偏りやバンプステアを疑いそうにもなる。

しかしながら、このクルマは違う。

完全に乾ききった路面で、ステアリング操作を落ち着いて行いさえすれば、911のもうひとつの顔である「ハイド」が表面化する心配はなく、さらにもっと極端に言えば、この現代において、クラシックな930ターボのコントロールを失うとすれば、よほど間の抜けたドライバーだということになる。今回の試乗では、重量配分やバンプステアなど、いずれも気にならなかった。

この911は、ストレートで高速走行しているときも安定しており、ドライバーに不安を与えることはなかった。ただただ無心で速度域の頂きへと切り込んでいくだけだ。

ステアリングは軽く、一貫性があり、前向きで、パワステへの過度な信仰を戒めてくれる。ロールはわずかであり、高速走行可能な起伏に富んだ道の上り、下り、そして段差を現代の多くのクルマが真っ青になる性能で駆け抜ける。

コーナリングはどうだろう?

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