挙げきれないほどの魅力 911 GT3 ツーリング 理想を導く着実な進化 BBDC 2025(6)

公開 : 2026.01.04 18:05

1年に試乗した中で、運転体験の喜びが最高の1台を選ぶBBDC 公道とサーキットで徹底評価 フェラーリにマクラーレン、ポルシェ、アストン、ランボルギーニまで10台の混合戦 2025年の頂点は?

この世の道を謳歌する究極的な時間

雨に濡れたグレートブリテン島北部、湖水地方に伸びる丘陵地帯の道で、他を圧倒する安心感を与えてくれたのは、700psのマクラーレンアルトゥーラ。ここまでの一体感と、操る自信を与えるマシンは極めて限られる。

ステアリングは以心伝心で、乗り心地はスムーズ。レスポンスは非の打ち所がないほど自然。運転体験を超えて、この世の道を謳歌する究極的な時間といっていい。

手前からポルシェ911 GT3 ツーリングと、マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー、フェラーリ12チリンドリ
手前からポルシェ911 GT3 ツーリングと、マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーフェラーリ12チリンドリ

モータースポーツ由来のブランドらしく、サーキットでも理想的。ラップタイムを削ろうと筆者が必死になれたのは、今回の10台ではアルトゥーラのみ。マット・ソーンダースも「信頼感の中で思い切り運転できたのは、これだけかも」。と振り返る。

濡れた路面なら、テールスライドで達成感を得るのも難しくない。スタビリティ・コントロールを切り、ヘアピンの出口で右足を深く倒せば、絶妙なオーバーステアで遊べる。狙われた特性には、合致しないかもしれないが。

911 GT3が秘める挙げきれないほどの魅力

さすが、2024年のBBDC勝者といえる。だが、2025年に審査員から最も多くのポイントを獲得したのは、9000rpmまで上昇する自然吸気エンジンをシャシー後端に積み、従来的な3ペダル・マニュアルで操るクルマだった。

コミュニケーション力は望外に高く、シャシーは徹底的に忠実。電動パワーステアリングも、世界屈指の仕上り。レス・イズ・モアを感じさせる構成でもある。他にも、挙げきれないほどの魅力がある。そう、ポルシェ911 GT3 ツーリングだ。

マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー(英国仕様)
マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー(英国仕様)

992型の911がBBDCで勝利を掴むのは、これが4度目。足まわりやエンジン、ギア比が改められた最新の992.2型も、ドライバーズカーとして最高の完成度にあることが、2025年にも証明された。過年とはまったく異なる、公道とサーキットで。

理想的な結果を導いた着実な進化

序盤から、911 GT3 ツーリングが勝利する可能性は低くなかったが、見事に期待へ応えた。濡れた路面へ適したタイヤとはいえない、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履いていても、悪魔的に陶酔させる走りを披露した。公道でも、サーキットでも。

先進的なパワートレインなしで、2025年にもドライバーを深く満たせることを、911 GT3は示している。着実な進化が、理想的な結果を導くことを体現している。

ポルシェ911 GT3 ツーリング(英国仕様)
ポルシェ911 GT3 ツーリング(英国仕様)

水平対向6気筒の自然吸気ガソリンエンジンは今、その魅力が最大限に引き出されている。自らギアを選べる6速MTと、有能なサスペンション、精緻なステアリングが、クルマとの一体感をこの上ないほど高めている。

過去にないほど、配点は分かれた。だが審査員4名が、911 GT3 ツーリングへ最高点を与えている。表彰台の頂点を掴んだことへ、異論を口にする者は1人もいなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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