アルファ・スパイダーの系譜を探る(1) ジュリエッタ・スパイダー 試乗記

公開 : 2017.10.01 15:40

中産階級に向けた初めてのスポーツカー

ジュリエッタスパイダーは中産階級に向けた初めてのスポーツカーであり、その意味でアルファ・ロメオという会社の変化を映し出すクルマでもあった。

これはもはや恵まれたエリートのために少量生産する貴族的なモデルではない。そういうクルマを熱望しながら我慢していたヨーロッパのひとびとのための、あるいは2台目もしくは3台目を買うファミリーが増えてきたアメリカでマニュアルシフトを好む人に向けた、手の届く道楽グルマだ。

ピニンファリーナにとっては労働集約型の手作りから脱し、1日に2桁の台数を作る新たな生産体制をもたらすモデルのひとつになった。

ジュリアを名乗る前のジュリエッタ・スパイダーはすべて1290ccの4気筒を搭載。これにトンネルケース・ギアボックス(ケースを左右分割ではなくトンネル型に一体成形したもの)を組み合わせ、15インチの細いミシュランXの内側に、大きなフィンの付いたドラムブレーキを備えていた。

今回の取材車は、英国で古いアルファを扱う「クラシック・アルファ」のリチャード・ノリスがポルトガルのコレクターに売却したばかりの750系だ。ボンネットを開けると、ハンサムなツインカムエンジンに比べて、小さなソレックス・キャブレターがちょっと場違いな感じに見える。

ノリスによれば、ツインキャブのヴェローチェのほうがずっと良いが、ノルマーレ(=スタンダード/取材車はそれ)より遥かに高価だという。床下を覗き込めば、リアには軽合金製のデフケース。フロント側からはダブルウイッシュボーンのサスペンションが見える(105系はシングルウィッシュボーン)。

インテリアは、フロアがかなり高く、シートは小さい。鉄板剥き出しのシンプルなダッシュボードから、セダンのように径の大きなステアリングが長いコラムを介して膝の近くまで迫っている。

しかし簡単に開閉できるソフトトップや昇降式のドア・ウインドウ、ゆとりあるラゲッジスペースなどと並んで、ドライバーに近いステアリングは50年代のスポーツカーに必要な付加価値だった。

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