究極のスポーツカーはどっち? ポルシェ911GT3 vs ルノースポール・メガーヌR26

公開 : 2017.11.04 16:10

メガーヌR26 サーキットで予想外の健闘

次にわれわれは外周サーキットに向かったが、ここでGT3はあっという間に面目を挽回した。ここは2本の長いストレートをふたつの180km/h超級のコーナーでつなぎ、途中に150km/hほどで抜けるS字セクションを置いたハイスピード・コースである。大部分がパワーで決まるものの、高速コーナーで踏み切れないパワーだけのクルマだと、スタビリティのしっかりしたアンダーパワーのクルマに出し抜かれることもある。

GT3は決してパワーだけのクルマではないが、R26は並外れてスタビリティが高い。それでもなお、外周サーキットを支配したのはGT3であった。圧倒的にパワフルなエンジン、ワイドなハイグリップタイヤ、巨大なカーボンセラミックブレーキ……これだけ揃えて負けるほうがおかしい。R26に勝ち目などない。

精密機械のごときGT3のエンジンを8200rpmのレヴリミットまで引っ張り上げ、1速、2速、そして3速、4速とシフトアップしていく一連の動作は、このうえない高揚感をもたらしてくれる。ポルシェの名を裏切らないそのパワーユニットは、4200rpmあたりからサウンドとパワーを1ランク高め、さらに6000rpmを超えるとまるでガソリンを自分の身体に注入されたかのように体温が上がり、笑いがこみ上げ、場合によっては絶叫してしまうほどの興奮に包まれる。さらにその上ともなると、もはや身体がシートにめり込む感覚しかない。

ウインドスクリーンの光景が鮮やかに赤みを帯びてきたことに気がついたなら、それは180km/h超の高速コーナーを通過している証拠だ。あまりに切れ味の鋭いステアリングにコーナーであることを意識せずに旋回し始めてしまい、強烈なGで目が充血して初めて置かれている状況に気がつくのである。空力パーツが十分に効果を発揮する速度域では、アンダーステアは皆無となる。そしてS字の手前でブレーキを踏めば、信じられないほど強力な力で身体を前方に持って行かれることになる。

このクルマのすべての操作系には、一貫して素晴らしいフィールがある。それゆえ走り込むほどに夢中になってしまうのだが、危険な領域に踏み込んでしまう前に、いったん冷静に落ち着いてみたほうがいいだろう。そのとき初めて、GT3がもたらす至福の瞬間を経験できた事実を、実感を伴って受け入れられるはずだ。そしてそれを理解したあとでは、もはやR26を以前と同じ目で見ることができなくなっているだろう。

しかし、GT3が勝負を支配できたのはここまでだった。ザ・スネークにステージを移した途端、忠誠心はあっという間にR26に連れ去られてしまったのだ。

われわれがここチョバムで得た結論はこうだ。道が開けているほど、GT3がR26を圧倒する。これは完全に予想どおりである。しかし、ストレートを取り払ってコーナーとバンプだけでコースを造ったら、R26がGT3を逆転することになる。というのも、ザ・スネークで徹底的に走らせてみたところ、R26はひたすらスムーズかつ鮮やかで、しかも単に扱いやすいだけではなく、実際にラップタイムでGT3を上回っていたからである。これはまったく予想外だった。

ザ・スネークでのGT3は、再びアンダーステアとの格闘を繰り広げていた。GT3に乗っていると檻の中で全力を出せない猛獣のような気分だったのに対し、R26は飛ぶように軽やかだった。絶対的パワーが低いために、そのほとんどすべてをアスファルトに伝達することが可能であり、懐の深いロードホールディング性能と軽快な身のこなしを完全に活かすことができたからである。

R26ならばザ・スネークを95%の、もしかするとそれ以上の実力を引きだして走ることができる。対するGT3では70%以上はどうやっても引きだせなかったし、場合によっては半分にも満たなかった。それ以上を求めるのはコースアウトのリスクと背中合わせであり、1800万円の借り物でやるべき行為ではなかった。

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