リスター・サンダーに試乗 ジャガーF-タイプ・ベースの「モンスター」

公開 : 2018.04.21 16:10

少々煮詰めが必要

ちょっと振り回してみると、まだ市販前にシャシーを煮詰めないといけないことがはっきりわかる。
21インチのホイールは、見ている分にはまるでイアン・カラムが描いたF-タイプの原画から飛び出してきたようなのだが、走ると時折フェンダーとタイヤのこすれる音が排気の大音響のあいだを縫ってきこえてくるのだ。

おなじKW製でもF-タイプRよりばねレートは高いのだが(アダプティブ・ダンパーのセッティングは元のまま)、それでも特に乗員と荷物が増えるとサスペンションが路面の凹凸についていけていない。基本となるジャガーのシャシーバランスを完全にぶちこわすわけではないが、ランカシャー地方のこんな道では、ありがたくないことだが、微妙に姿勢をくずしそうなきらいもある。

たしかに、ばかげたほどの音と手の内の大パワーとは裏腹なホンモノの操縦性が、リスターの強みの1つだ。オーナーのいちばんの心配ごとは、あごのように突きでたカーボンファイバー製のエアスプリッターを街中でこすりやしないかというくらいだろう。

サンダーの14万1155ポンド(2123万円)という価格は、V8搭載のアストンDB11に真正面からねらいを定めたものだ。さらにカーボンファイバー・ボンネット代の1万4850ポンド(223万円)を追加するとなれば、新型のベントレー・コンチネンタルGTも相手になってくる。

リスターのクルマを買おうという頭のねじが飛んだひとなら、注文書にサインする前にほかのライバルもみておこうなどとは思わないだろう。サンダーの希少性とたぐいまれな奇抜さにやられてしまうのもうなずける。

たしかにシャシーの煮詰めのほかにもまだ仕上げるところはのこっているが、乗ってみた第一印象としては、イギリスでもっとも愛されたメイクのひとつがまともな形で帰ってきたなというところだ―耳をつんざく爆音とともに。

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