ロールス・ロイス・スペクター・シリーズII(2) ファントムやカリナン以上の安楽さ 長年愛する人が求めていた非日常クーペ

公開 : 2026.08.24 18:10

ロールス・ロイス初のEV、スペクターがシリーズIIへと進化しました。BMW第6世代のバッテリーを獲得し、航続は627kmに。静寂に包まれながら豊満なパワーを味わえる非日常クーペを、UK編集部が試乗します。

静寂に包まれながら展開される豊満なパワー

ロールス・ロイススペクターは、ブラックバッジでも、通常の最高出力は601psに制限されている。ステアリングホイール上のインフィニティ・ボタンを押すと、680psが開放され、0-100km/h加速を4.5秒ではなく4.3秒で処理するようになる。

もっと強力にすることも可能だったはずだが、ロールス・ロイスの優先順位はそこになかった。フルパワーを展開しても、スペクターはジェントル。急加速時でもボディはフラットに保たれ、トラクションが不足することなく、唐突さもない。

ロールス・ロイス・スペクター・シリーズII(英国仕様)
ロールス・ロイス・スペクター・シリーズII(英国仕様)

静寂に包まれながら、路面へ豊満なパワーが展開されていく。同社が磨き上げた、上質なV12エンジンを凌駕する勢いでありつつ、節度あるマナーは見事に保たれる。ブラックバッジには、ローンチコントロールの「スピリテッド・モード」が実装されるが。

他励同期モーターの特性上、速度上昇とともにパワーが衰えていく感覚も小さい。約100km/hから160km/hへの中間加速を、5.0秒で処理してみせる。

意のままで優雅な速度調整を可能にするレスポンス

スペクターにドライブモードの設定はなく、アクセルペダルのレスポンスには、僅かなタメがある。不自然な遅れではなく、不意に急激な加速へ襲われることのない、絶妙な設定にある。このワンクッションが、意のままで優雅な速度調整を可能にしている。

ブレーキの効きは、ロールス・ロイスらしく穏やか。リニアに反応し、シームレスに0km/hへ導くことも可能。後席で嗜まれる、シャンパンがこぼれることのないように。思い切りペダルを踏み込めば、まったく不足ない制動力も呼び出せる。

ロールス・ロイス・スペクター・シリーズII(英国仕様)
ロールス・ロイス・スペクター・シリーズII(英国仕様)

アクセルオフでの回生ブレーキの効きは、細かくは調整できない。ステアリングコラムから伸びるセレクターに、強くなるBモードは用意されるが。

長距離の安楽さはファントムカリナン以上

浮遊感を伴う乗り心地は、ブランドの代名詞と呼べる。郊外の幹線道路でも、高速道路の追い越し車線でも、まるで路面から僅かに浮いたかのようにスムーズ。シリーズIIでも、この特性の維持へ腐心されている。

ブラックバッジでは、80km/h前後の制御が僅かにタイトながら、しなやかさは変わらず。快適性へ、不満を抱く人はいるのだろうか? ファントムやカリナン以上に、安楽に長距離を走破できるに違いない。

ロールス・ロイス・スペクター・シリーズII(英国仕様)
ロールス・ロイス・スペクター・シリーズII(英国仕様)

操縦性も自然で上品。過度な反応はなく、カーブではある程度のボディロールを生じる。路面が酷く傷んだ区間では車重を実感しても、落ち着いた身のこなしは乱れない。

ステアリングは軽めながら、ロールス・ロイス基準ではダイレクト感が高く、ロックトゥロックは2.4回転。ブラックバッジでは僅かに重くなり、フィードバックが増す。トラクション/スタビリティ・コントロールの介入は自然で、意識することは殆どない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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