レーシングタイヤは手作り 原料は天然ゴム 製造工程を追う

公開 : 2018.10.06 07:10  更新 : 2021.03.05 21:30

すべてハンドメイド 熟練の技

「世界耐久選手権のLMP2とGTEクラスへの参戦チーム、それとドイツのVLN耐久シリーズ参戦チームにタイヤを供給しています」とナセロはいう。「こうしたレースでは、他のタイヤメーカーとのし烈な争いがあるので、常に全力で対応しています」

だからこそ、37名のオペレータによってハーナウのレーシングタイヤ生産拠点で行われる作業が非常に重要となる。製造工程におけるごく小さなひとつのミス、例えば1mm程度の材料の整列不良といったものが工場で明らかになることはないが、2週間後、レース中盤でのパンクとしてレーシングカーに襲いかかるのだ。こんなことはダンロップだけでなく、他のタイヤメーカーも望んではいない。

「レーシングタイヤは少ない部材で構成されている一方、掛かる負荷は非常に大きいので、われわれのオペレータは熟練者ばかりです」と施設内を案内しながらナセロは説明する。「非常に繊細な作業ですが、それでも毎日150本のタイヤをハンドメイドで生産しています」

ロードタイヤが22の部材から構成されているのに対して、レーシングタイヤに求められるのは唯一グリップであることから、その構成部材は18に留まる。一方、ロードタイヤの場合には、非常に幅広い条件で性能を発揮する必要があり、さらに、衝撃吸収や、最近ではますます重要となっている転がり抵抗の低減といった機能も欠かせない。

ロードタイヤの製造装置とは違い、レーシングタイヤ生産を担うオペレータが作業をする様子はもっとも印象深いものだ。それはまるでオーダーメードで洋服を仕立てる職人の技を見ているかのようであり、ワークステーションの前に立ち、静かにラバーシートを折り込んでいく様は、サヴィル・ロウのスーツ職人と同じ自信に満ち溢れている。

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