ポルシェ918スパイダー

公開 : 2013.05.15 21:00  更新 : 2017.05.29 19:07

■どんなクルマ?

ライプツィヒにあるポルシェのテストコースを訪れたのは、ラリー・レジェンドであるヴァルター・ロールが新しいポルシェのフラッグシップ・モデルをドライブするのを見にきただけではない。ポルシェのエンジニア以外で、はじめてその複雑なメカニズムを持つ918スパイダーを最初にドライブするひとりとなるためだ。

918スパイダーは、コンセプト・モデルが発表されて2年の時が経ち、ようやくプロダクション・モデルの域まで進歩を遂げたのである。

そのエンジンは、4.6ℓのV8で、600bhpを8600rpmで発生する。1ℓにつき130bhpという出力だ。そしてこれに2台の電気モーターが組み合わせられる。1基はフロント・アクスルに、そしてもう1基がリア・アクスルに装着され、その合計出力は275bhpとなる。即ち、エンジンとモーターで875bhpのパワーを発揮することになる。

これにより、918スパイダーは、ポルシェ史上最もパワフルなモデルとなった。ちなみに、それまで最強だったRWDのカレラGTに搭載される自然吸気の5.7ℓV10は603bhpである。

しかい、875bhpで充分なのだろうか。ライバルであるラ・フェラーリはノーマル・アスピレーションの6.3ℓV12とHY-KERSの組み合わせで950bhp、マクラーレンP1もツインターボの3.8ℓV8とシングル・モーターで903bhpを発揮する。更に、1640kgの918スパイダーよりもら・フェラーリは385kg軽く、P1も240kg軽いのである。

■どんな感じ?

918スパイダーは、広く地面に身を伏せたようなフォルムを持つ。しかし、そのビジュアル的にはラ・フェラーリやP1に較べると美的なインパクトは薄い。

コクピットに乗り込むには、カーボン・モノコックが高く幅広いのと低いルーフ・パネルのせいもあって慎重を要する。シート・ベルトは通常の3点式なので、ドライビングを始める前にレース・ハーシュネスと格闘するようなことはないのが嬉しい。

キーを捻る。しかし、V8エンジンに火が入ることはなく、単純に電気モーターが少し遠くで音を立てるだけだ。フロント・ガラスを通しての視界は良い。しかし、リア・ウインドーはライトウエイト・チタンのエグゾーストのために塞がれている。その代わりに、リバース・カメラと小さい最小回転半径がピットアウトするのを容易にしてくれる。

918スパイダーはレース・ブレッドのマシンであることを主張するかもしれないが、少なくともそのサウンドはそのようには聞こえない。というのも、第1コーナーまでの間、ホイールハウスから聞こえるアスファルトの上を走るタイヤのロード・ノイズしか伝わってこないからだ。本当に静かだ。

充分なパッテリー・チャージがあれば、918スパイダーはEパワー・モードで走行が可能で、そのフロントのモーターだけで最高150km/hに達することが可能だからだ。従って、スタート当初は、918スパイダーはフロント・ホイール・ドライブということになる。

しかし、1周を終える前に、カミソリのようにシャープなスロットル・レスポンスと、激しいギアの衝動、ダイレクトなシャシー・パフォーマンス、そして激しいV8エンジンを知ることになる。そのエンジンは9150rpmのレブ・リミットまで、ぞくそくするようなメカニカルな甲高いサウンドを奏でる。

その走行モードは、基本的に効率とパフォーマンスを鑑みて5つのドライブライン・モードが選択できる。デフォルトはEパワー・モードで、フロント・モーターが使用される。また、26km/h以上になるとリア・モーターがこれに加わる。

ロータリー・タイヤルをまわしてハイブリッド・モードを選ぶと、モーターとエンジンが組み合わせられる。この場合、V8エンジンは常に火が入っているわけではない。

スポーツ・ハイブリッドは、V8エンジンは連続的に動き、モーターも殆どの場合においてパワーを発生させるというもの。更にレース・ハイブリッドでは必要に応じてフロント・ホイールのモーターがトルク・ベクタリングの役目を果たし、リア・モーターはフロント・モーターに電力を供給するジェネレーターとなる。

更に、電気モーターの能力を通常よりも20%多い90%まで使用することの出来るホット・ラップ・モードも用意される。

レース・ハイブリッド・モードで3速ギアでの加速感が最もパワーが感じられる。3つのパワー・ソースが発する力が、V8サウンドの唸りと共に遺憾なく発揮されるのだ。そのフィーリングは4速ギアでもかわらず、5速ギアになって一息つく感じだ。トルクは強大で、とてつもないスピードに達しているのを感じさせないほどである。

2つのモーターが最高0.5Gの減速Gに対応する回生ブレーキ・システムが装備されている。このブレーキ・システムはブレーキ・ペダルを踏むまでは回生エネルギーを発生させないという仕組みだ。その複雑な構造にもかかわらず、カーボン・セラミックのブレーキは、素晴らしく効きが良く、フィーリングも良かった。

高速コーナーでの挙動はも素晴らしい。ステアリングは、4WSで、前後のアクスルに作用する。予想するよりも電気機械式のアシストはやや軽いが、タイヤのグリップは恐ろしいほど強力で、ロールは殆ど感じられない。また、そのステア特性もアンダーステアでもオーバーステアでもない、本当にニュートラルなフィーリングだ。

ドライブしやすい要因として、そのホイールベースの間に、主要なドライブ・システムが配置され、さらには3つにわけられている電源ソースが、例外的に低くマウントされていることにある。例えば、ガソリン・エンジンと7速PDKを含むリアのドライブ・アッセンブリーの中心は、路面から273mmのところにあるのだ。また、6.8kWhのリチウム・イオン電池は、70ℓの燃料タンクよりも低くマウントされている。

ポルシェは推進力のためだけにフロント・モーターを使っているわけではない。フロント・モーターが発生するトルクを調整することによってハンドリングを修正しているのだ。つまり、これによってアンダーステアやオーバーステアをコントロールしているのだ。

サスペンションは、フロントがダブル・ウィッシュボーン、リアがマルチ・リンクという構成で、調整可能なスプリングとダンパー、そしてメタル・トゥ・メタル・ジョイントが用いられている。レース・マシンのように縁石の上でクラッシュしないように、充分なサスペンション・トラベルも取られている。それはロードカーとして、多くの道に対処しなければならないからだ。

ちなみに、そのパフォーマンスはトップ・スピードが340km/h。0-100km/h加速が2.8秒、0-200km/h加速が7.9秒だ。モーターだけでも150km/hのトップ・スピードを持つ。燃費は30.3km/ℓで、CO2排出量は79g/kmだ。

■「買い」か?

少なくとも今回のプレプロダクション・フォームでは、918スパイダーはわれわれの予想を上回った。驚くべきは、そのパフォーマンスへのアクセスしやすさにあった。シャシー・チューニングに関しては、ポルシェはまだゴーサインを出していないようだが、それでも並外れたトラクションを持っていることは確かだ。

とはいえ、ポルシェは918スパイダーのセッティングに関しては「学習過程だ」という。「われわれはドライブ・システムを改善するために常にデータを収集しているところだ。」と。

複雑な機構を持つにもかかわらず、918スパイダーには隙がない。しかも、充分にコミュニケーティブなのだ。そして、918スパイダーは恐るべきクルマではなく、ドライブしていて楽しいクルマであることも確かだ。付けられたプライス・タグを忘れることができるのであれば。

(グレッグ・ケーブル)

ポルシェ918スパイダー

価格 £664,135(1億330万円)
最高速度 340km/h
0-100km/h加速 2.8秒
燃費 30.3km/ℓ
CO2排出量 79g/km
乾燥重量 1640kg
エンジン V型8気筒4593cc
最高出力 600bhp/8600rpm(875bhp:ハイブリッド・モード)
最大トルク 54.1kg-m/6600rpm(81.6kg-m/800-5000rpm:ハイブリッド・モード)
ギアボックス 7速PDK

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