ロードテスト メルセデスAMG GT 4ドア・クーペ ★★★★★★★★★☆

公開 : 2019.04.20 09:50

走り ★★★★★★★★★★

AMGを率いるトビアス・メールス曰く、この4.0ℓユニットのパフォーマンスは、ポテンシャルの限界に近いところまで来ているとか。これより下位のモデルが2機種あるとはいえ、今回テストしたGT63仕様に限れば、メールスには都合のいいことに、これよりパワフルな4ドアのパフォーマンスカーが必要かと疑問に思えるほどだった。

ローンチコントロールが上々に働き、四輪駆動の恩恵であるトラクションが十分に活きれば、この585psの4ドアGTは3.4秒で100km/hに、7.7秒で161km/hに到達する。0-161km/hは、2017年に計測したGT Rにコンマ5秒弱遅れるのみだ。冷えたドライ路面での発進は、すばらしく歯切れがいい。活きのいいパワーの波が押し寄せ、つながりのいいギアレシオと相まって、シフトアップのたびに回転系の針はパワーバンドのスイートスポット内で上下を繰り返し、クルマは前へ前へと突進していく。1マイル、すなわち1.6kmほどの直線テストコースでは、猛烈な勢いで270 km /hを突破。まるで、311km/hというリミッターによる最高速が、ずいぶん控えめな設定だと言わんばかりだ。

標準装備の鋳鉄ブレーキは、この急激な加速にも十分見合った性能を備え、食いつきが良く、不要なアシストはなく、ハードブレーキングでシャシーがバタつくこともほとんどみられない。113km/hからの制動距離は、2ドアGT Rのそれより1.2mほど長いが、ウェイトが470kgも重い2135kgだということを考えれば納得の結果だ。

このGT63は、望めばより実用的な使い方もできるが、魅了されるか、さもなければ恐ろしくなるほどのポテンシャルを秘めている。AMGのV8ツインターボは、この4ドアGTに、おそらく理想的な仕事場を見出した。この強烈な個性を放つエンジンは、スポーツエキゾーストを活かさないことが滅多にないほどハードな使い方を要求し、スロットルレスポンスがよく、疾走感のある低いエンジン音とは矛盾するほどイナーシャのないクランクシャフトを伴う。

ローから中間ギアまでがクロスレシオでよくしつけられた9段トランスミッションは、スロットルを大きく開けると、スーパーカーのごとくクイックにエンジン回転を高めていく。しかし、V8ツインターボは強力なので、それほどペダルを踏み込まなくても速く走るし、極太のトルクは、高いギアでもオーバーテイクを楽々こなす。5速での80-113km/h加速タイムは3秒を切り、W12エンジンを積むコンチネンタルGTすら凌いだ。

テストコース

AMGの名を持つクルマなら、サーキットでも少なくともそれなりにいい走りはするだろうと期待されるところだ。そしてそれを、とてもサーキット向けとはいえないGT63が、MIRAのダンロップ・サーキットで証明してみせた。実際、このクルマのラップタイムは、もっとシリアスなマシンたちと比べてもトップレベルで、昨年にほとんど同じコンディションで計測したベントレー・コンチネンタルGTを軽々と抜いてみせた。

AMGの鋳鉄ブレーキは、ほんの3周で利きが落ち、公道仕様のミシュラン・パイロットスポーツ4Sもすぐにタレたが、それでも結局はクルーのクーペよりほぼ3秒速かった。強くブレーキングするゾーンや高速コーナーでも巌のごときスタビリティは揺るがず、それを前輪がグイグイと引っ張る。ここまでハードに走らせる機会はまずないだろうが、よほど無謀なことをしなければ、失敗にも寛容だ。

ドライサーキット

メルセデスAMG GT63 4マチック+4ドア・クーペ:1分11秒7

ベントレー・コンチネンタルGT W12ファーストエディション:1分14秒6

T2での高速コーナリングではかなり大きくロールするが、それでもかなりの速度で駆け抜けることができる。

ヘアピンを3回もハードに走ると、2.1トンのクルマに装着された鋳鉄ブレーキは冷却時間が必要になった。

ウェットサーキット

メルセデスAMG GT63 4マチック+4ドア・クーペ:1分8秒3

ベントレー・コンチネンタルGT W12ファーストエディション:1分7秒5

AMGの電子制御デフは、ウェットコンディションでハンドリングの十分すぎるアジャスト性をもたらすが、唐突な動きも生む。

シャシーは、T7にテールスライドしながら入ることも、加速しながら入ることもできる。このクルマの4WDは、単にオーバーステアを打ち消すものではない。

発進加速


テストトラック条件:乾燥路面/気温14℃
0-402m発進加速:11.5秒(到達速度:198.9km/h)
0-1000m発進加速:20.9秒(到達速度:252.5km/h)


ベントレー・コンチネンタルGT W12
テストトラック条件:乾燥路面/気温12℃
0-402m発進加速:11.8秒(到達速度:197.6km/h)
0-1000m発進加速:21.2秒(到達速度:255.7km/h)

制動距離


テスト条件:乾燥路面/気温14℃
97-0km/h制動時間:2.79秒


ベントレー・コンチネンタルGT W12
テスト条件:乾燥路面/気温12℃

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