試乗 1954年式 デイムラー・ドーファン 英国上流階級の悲喜こもごも

公開 : 2019.05.20 07:10  更新 : 2020.12.08 11:10

1950年代としては先進的な装備類

復活したこのドーファンだが、4870mmを切る当時としてはコンパクトな全長だから、大きくフェンダーが膨らんだスタイリングが大げさに映る。しかし、仕上げ品質は素晴らしい。メープルかブリーチ・ウォルナットか、いずれにせよ美しい木目が用いられたドアのインナーパネルや、ダッシュボードから続くキャビネットには目が奪われる。

細い鉄線のスポークで支えられる細身のステアリングホイールは巨大だが、パワーステアリングはない時代だから、駐車時や低速コーナーではそれなりの筋力が要求される。緩くカーブしたフロントガラスは、同じ時期にアールズコート・モーターショーで発表された、コンクエスト・ロードスターからの流用品となっている。

ガソリンが残り少なくなった時に補助的に使うフュエールリザーブ・スイッチがダッシュボードに備わり、まだガソリンスタンドの数が少なく、営業時間も安定的ではなかった時代を物語る。一方で、フロントガラスのウォッシャーやフロントシートのリクライニング機能など、現代では一般的な装備が整っていることは、ドーファンが上流向けモデルだったことの証。

前席のサイドガラスはパワーウインドウになっており、1953年当時は相当な贅沢装備だったに違いない。リアシートには2客のバケットシートが備わり、太く平たいCピラーのおかげで、プライバシーも守られている。1950年代では、洗練された移動手段以外、何物でもなかったと思う。

エンジンは直列6気筒で、ノイズも加速も控えめなものだが、車重は1580kgほどあるから仕方ないだろう。興味深いのがプレセレクター機能を備えたトランスミッション。オートマティックが英国で一般化するのはまだ先の時代ではあったが、デイムラーは4速ミッションに「セルフチェンジャー」レバーを装備させていた。賢い流体フライホイールによって、アイドル状態からエンストすることなく、発進が可能だった。

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