【英国流マッスルカーたち】初代TVRグリフィス オースチン・マリーナ2600ほか 前編

公開 : 2021.06.20 07:05

英国でマッスルカー文化は一般化しなかったものの、大排気量エンジンが積まれたモデルは何台もありました。英国編集部がその一部を振り返ります。

アメリカで大きく花開いたマッスルカー

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:C&SC Archives(C&SCアーカイブス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1960年代から1970年代にかけて、アメリカで花開いたマッスルカー文化。筋肉質なボディに大排気量高出力エンジンの組み合わせで、クルマ好きの好奇心を強く刺激した。

マッスルカーと聞いて、凄まじい加速を披露する様子を目に浮かべる読者も多いだろう。政府などが危険で反社会的な乗り物だとみなすまでは、ひたすら自由で楽しい時代だったに違いない。

ジェンセンC-V8(1962年/英国仕様)
ジェンセンC-V8(1962年/英国仕様)

アメリカを象徴するようなマッスルカー。スタイルは形作られていたものの、英国の自動車メーカーへ本格的に波及することはなかった。日本でも同様だ。

法律だけでなく、その土地独自の地域性が売れる自動車へ大きな影響を及ぼす。英国へマッスルカーが伝播しなかった理由は、加速性能重視の燃費度返しなファミリー・サルーンという需要が、実際には存在していなかったからだ。

英国で大排気量エンジンが与えられたのは、専ら大きく重いモデル。ATが一般化する以前、面倒なMTの操作を最小限にしながら、豊かなトルクで車群を抜け出すのに充分なダッシュ力を得る目的で搭載されていた。

中にはアメリカ製のV8エンジンを搭載した、小柄なモデルも存在していた。ジェンセンやブリストル、ACなど。英国のマッスルカーと呼んでも良さそうだが、英国人はそんな意識は持っていないように思う。

英国流マッスルカーとはどんなクルマか

筆者にとってマッスルカーとは、レザーを用いてハンドメイドで豪華に仕立てられた、高価なモデルというイメージはない。普通の中型モデルに、ビッグブロック・エンジンを載せただけのようなクルマを指している。

その点でジェンセンC-V8も、AC 428も、マッスルカーという枠には入らない。そんな上級志向のクルマは、ブルーカラーが選ぶモデルではないからだろう。グランツーリスモ的であり、筋肉むき出しでストリートで戦うようなマシンとは一線を画している。

オースチン・マリーナ2600(1973年/南アフリカ仕様)
オースチン・マリーナ2600(1973年/南アフリカ仕様)

ザ・マッスルカーといえば、アメリカ・デトロイトやディアボーンの街で製造された6Lや7LのV8エンジンを載せた、ミドルクラスの2ドアモデル。1960年代後半から1970年代前半までの、短い期間で。

マッスルカーとは、民主化された高性能モデルであるべきだ。そんなクルマは、英国メーカーの中にも存在したのだろうか。なくはないが、ピタリと当てはまるモデルを探すのは難しい。

南アフリカやオーストラリアなど英国との結びつきが濃い国では、英国を起源とする中型のファミリー・サルーンに、6気筒や8気筒エンジンが搭載される例があった。ガソリン価格が安く、一般的な移動距離が長かったことが理由だろう。

オースチン・マリーナ2600は、その代表的な1台。安価なマッスルカーと呼べそうだ。見た目は一般的な量産モデルらしい。それでいて力強い加速を実現するために、4気筒以上の大排気量エンジンを積んでいる。

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