ロードテスト ジャガーFペースSVR ★★★★★★★★★☆

公開 : 2019.08.03 11:50  更新 : 2019.08.09 16:51

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

BMWならば、ホットなSUVはMモデル的なものを誇張して感じられるように造るだろう。同じくアルファも、ステルヴィオの最上位モデルをジュリア・クアドリフォリオのような運動性を持つものに仕立てるべく奮闘した。それらはすばらしく、技術面で妥協のないクルマだが、FペースSVRに少し乗れば、ライバルたちが大きく重く、ファミリーユースも加味したパフォーマンスカーを、適切な走りのフィロソフィや満足できるアプローチに則ってチューニングしたのかどうか、疑問を覚えるようになる。

このSVRの名を持つSUVで、ジャガーはハイスペックなクーペやセダンのハンドリングを再現しようとはしなかった。結果、パワーオーバーステアを積極的に使ったり、軽く手首を効かせるだけでコーナーに飛び込んだりするマシンに仕上げることはできなかったが、安定感や乗り心地が非常に優れたSUVの範疇で、安心感と大きな楽しさを両立した。

ジャガーが生み出したのは、まさしくFペースのSVRバージョンだった。電動ステアリングは自然な手応えと攻めすぎない速さだが、レスポンス不足は決してなく、速いジャガーの多くがそうだったように、この上ないコンフィデンスを与えてくれる。高速コーナーでのロールは思いのほか大きいが、その動きはリニアで、飛ばしてもコントロールの瀬戸際で動揺するようなことはない。方向転換はGTカー的で、ドライバーに素早い荷重移動で勢いを保たせようとする。しかし、あまり心配しなくてもいい。すぐに取り戻せるはずだ。

後輪寄りの4WDと広い接地面により、ロードホールディングはエクセレントで、トラクションに不安を覚えることはめったにない。ただし、このクルマは本質的に安全志向で、パワーをかけると穏やかなアンダーステアを示す。ブレーキを残せば幾分は緩和できるかもしれないが、結局のところアジリティよりスタビリティ優先のチューニングなのだ。ポルシェ・マカンやステルヴィオ・クアドリフォリオで肝を冷やしたことのある身としては、それがもっともだと思える。

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