ポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッド

公開 : 2013.06.20 20:00  更新 : 2017.05.29 19:07

■どんなクルマ?

ポルシェパナメーラS E-ハイブリッドは、フェイスリフトが加えられたパナメーラの最初のモデルとなる。8月には英国でも販売されることになる先進のガソリン-電気ハイブリッドは、パナメーラSハイブリッドに、若干のエクステリア・デザインを変更しただけでなく、そのドライブラインに大きな変更がなされている。

プラグイン・システムを含むオンボード・チャージャーが搭載され、バッテリーは以前の空冷のニッケル・メタル電池から液冷のリチウム・イオンに変更されている。その結果、燃料消費とCO2排出量が削減され、パフォーマンスは確実に上がった。

但し、すべてがバラ色というわけではない。ドライブラインの変化は、旧いパナメーラ・ハイブリッドよりも115kg増の2095kgというボディ・ウエイトとなったのだ。これは、エントリー・レベルのパナメーラよりも実に325kgも重たい数字だ。

しかし、S E-ハイブリッドは、32.2km/ℓという燃費と、71g/kmというCO2排出量を持つ。また、そのパフォーマンスは、0-100km/h加速5.5秒、0-200km/h加速19.0秒。80-120km/h追い越し加速が3.4秒。トップスピードは270km/hという数値をマークする。

また、9.4kWhと従来の4倍以上の容量を持つ新しいバッテリーのお陰で、前モデルを遥かに上回る航続距離を得た。地形によっても異なるが、公式アナウンスでは36kmをバッテリーだけで走行することが可能だとしている。実際、ポルシェのエンジニアによれば、18kmから36kmの間ぐらいだという。それでも、旧いパナメーラSハイブリッドは、2kmしかなかったのだから大幅な向上だ。ちなみに電気モーターだけの最高速度は135km/hだ。

バッテリーの充電時間は、240Vの場合4時間、400Vの場合は2時間とされている。

アウディから供給される3.0ℓダイレクトインジェクションV6スーパーチャージャー・エンジンは、328bhpのパワーと44.8kg-mのトルクを持つ。一方、電気モーターは94bhp、31.5kg-mのパワー、トルクを持つ。その合計は410bhp/5500rpm、60.1kg-m/1250-4000rpmとなる。駆動方式はRWDで、8速のオートマティック・トランスミッションが組み合わせられている。

ポルシェは主に低速時の乗り心地を改善するために、サスペンションにも手を入れた。シャシー・マウントはフロントが固められ、アダプティブ・ダンパーにはオイルが注入された。また、レスポンスを向上させるためにエア・スプリングのソフトウェアも書き換えられている。更にバネ下重量の軽減と、エアフローを改善させたアロイ・ホイールも採用されている。

■どんな感じ?

複雑なパナメーラS E-ハイブリッドのドライブラインは、自動車技術としては先進のものであるが、そんなことを感じさせずに大きな4シーター・ボディをグイグイ前方へ引っ張っていく。

ポルシェは4つのドライビング・モードをS Eハイブリッドに用意している。E-パワー、ハイブリッド、E-チャージ、そしてスポーツだ。ドライバーはコンソールのスイッチでモードを選ぶこともできるが、ベストな燃料消費を自動的に選択してくれるように設定することも可能だ。

デフォルト・モードはE-パワーだ。このモードでは、充分なチャージがあれば電気モーターを常に使用する。その改良レベルは素晴らしく、純粋なEVのようにタイヤが転がっている音だけがキャビンに入り込むだけだ。このモーターだけの走行を如何に長くするかは、あなたがスロットルをどのくらい踏み込むかに掛かっている。電気モーターが発する以上のパワーが必要な場合や、チャージが不足してくると、自動的にハイブリッド・モードのひとつであるE-パワー・モードに変更になる。ドライバーにはバッテリー・チャージの状態や、最も効率のよいモードなどのインフォメーションが伝えられる。

E-チャージ・モードは、走行中にバッテリーをチャージするモードで、エンジンは動いた状態になる。つまり、エンジンをレンジ・エクステンダーとして使用するというものだ。

今回試乗した52kmのテストコースの往路工程は、48km/hの平均速度で走った結果、500km/ℓという燃費をマークするに至った。テストコースの復路では、バッテリーの容量が少なくなったので、ほぼガソリン・エンジンが常に作動していた状態だったが、それでも30.4km/ℓの燃費を実測した。パナメーラ・ディーゼルが15.9km/ℓという平均燃費であることを考えれば、これは非常に印象深い結果である。

このS E-ハイブリッドが旧いSハイブリッドに対して持つ大きなアドバンテージは、リチウム・イオン電池に装着されるオンボード・チャージャーで、寝ている間や勤務時間の間に充電が可能となっている。そうすれば、日常的に純粋なE-パワー・モードで走行することができる。走行距離によっては、純粋なEVとしての使用も可能だ。

しかし、S E-ハイブリッド純粋なEVでは考えられないパフォーマンスを持っている。スポーツ・モードにすれば、ガソリン・エンジンと電気モーターが最大のパワーを発揮するように組み合わせられる。2095kgという重たいボディを恐ろしく速く動かすのだ。そのパフォーマンスは、0-100km/h加速で1.3秒、0-200km/h加速で11.4秒もパナメーラ・ディーゼルよりも速い。低いエンジン・ノイズ、良く抑制さえた風切り音、そして縦方向への素晴らしい安定性をもったドライビングが楽しめるのだ。

ハイブリッド・モデルならではのボディの重さは、本当にチャレンジングな道では目立つ。確かにコーナーを抜ける際にはパナメーラSよりも鈍さを感じるかもしれない。

しかし、そのブレーキも素晴らしく効き、サスペンションも低速時の乗り心地が改善されている。更に、クルージング・スピードでも、不規則な凹凸を巧みに吸収し、快適な乗り心を提供してくれるのだ。

■「買い」か?

これまでのSハイブリッドは、パナメーラのセールスの5%を占めるに過ぎなかった。しかし、このS E-ハイブリッドの登場で、ポルシェはその割合は少なくとも2倍になると見ている。新しいプラグイン・ハイブリッド・テクノロジーは本当に良く改善されており、現実の世界で燃料消費をぐっと低減することに寄与している。

新しい第2世代のハイブリッド・システムは、初期のものよりも遥かに優秀で、決して失望させることのないものだ。

(グレック・ケーブル)

ポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッド

価格 £88,967(1326万円)
最高速度 270km/h
0-100km/h加速 5.5秒
燃費 32.2km/ℓ
CO2排出量 71g/km
乾燥重量 2095kg
エンジン V型6気筒2995ccスーパーチャージャー
最高出力 410bhp/5500rpm
最大トルク 60.1kg-m/1250-4000rpm
ギアボックス 8速オートマティック

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