マツダ・ロードスターに触発された2台 Z3 MロードスターとCLK32 AMG 後編

公開 : 2019.10.27 16:50  更新 : 2020.12.08 10:56

マツダ・ロードスターの登場から数年後、やや旧式と呼べるようなスポーツカーのレシピで生み出されたドイツ製2シーター・カブリオレ。さらに高い支持を得るべく、MディビジョンとAMGとが手を加えた特別仕様を振り返ります。しかし最後には意外な伏兵も。

Mディビジョンが仕立てたエンジンを味わう

text:Chris Chilton(クリス・チルトン)
photo:Will Williams (ウィル・ウイリアムズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
BMW Z3 Mロードスターもメルセデス・ベンツSLK32 AMGに引けを取らないペースで加速するが、ドライバーはより多くの操作が必要。5速MTはBMWらしくストロークが長い。軽いスロットルと重めのクラッチペダルとのバランスで、1速から2速への変速はスムーズに行える。だが発進時、1速につなぐときは集中力が不可欠。

でもZ3 Mは進んで努力したくなる雰囲気を持つ。自然吸気の直6は、SLK32ほどのパワーを放出しないが、M3エボリューション由来のS50B32エンジンは、3.2Lから321psを絞り出す。1L当たり100psというハイチューンは、レーシングカーの特権ではなくなった。

BMW Z3 Mロードスター
BMW Z3 Mロードスター

トルクは10.2kg-mほどSLK32より細い。M112ユニットと同じ3500rpm当たりからパワーが増してくるが、メルセデス・ベンツのように背中がシートに押し付けられる豪腕は備わらない。スロットルレスポンスはシャープだ。

右足の力を緩めなければ、回転数の上昇に合わせてパワーも高まる。SLK32が6000rpmでシフトアップを求めてくるのに対し、7600rpmまで勢いは続く。エンジン音はクランクシャフトの回転が速くなるのに合わせて、徐々に泣き叫ぶように変化する。

1999年になると、Z3 Mロードスターに搭載されるエンジンはE46型のM3に搭載されていたS54ユニットへと新しくなる。馬力はわずかに増え、新しい電子制御スロットルのおかげでトラクションコントロールもより知的なものになった。

米国市場ではE36型のM3と同様にZ3 Mロードスターも、欧州と異なり環境規制に合わせてシングル・スロットルボディを搭載していたため、新エンジンへの変更で70ps以上も増えた。小さくない差だ。

アンダーステア志向の強いステアリング

エンジンが変わっても、フロアパネルの都合で5速MTから6速MTへのステップアップは叶わなかった。高く評価されたE36型3シリーズのコンポーネントを流用していたZ3だが、リアサスペンションは高性能なマルチリンク式のZアスクルではなく、セミトレーリングアーム式。3シリーズ・コンパクト由来のものだった。

つまり、マクラーレンF1のエンジンとも遠い親戚関係にあるユニットと、コンベンショナルなリアサスペンションの組み合わせ。ケン・ブロックの腕でもねじ伏せるのに苦労するオーバーステア・マシンになりそうだが、実際は違う。

BMW Z3 Mロードスター
BMW Z3 Mロードスター

よほどのドライバーでない限り、Z3 Mは基本的にアンダーステア。かなりプッシュしても基本的には安全パイが保たれる。乾燥した路面なら。ステアリングフィールは1960年代の古いロードスターのように、センター領域でのフィーリングは豊かだが、ボディ剛性で追いつかない部分がある。

SLK32の方がボディ剛性は高いようで、ドライビングフィールはより現代的。少量生産の改造マシンではなく、しっかり上質に整えられたパフォーマンスカーのようだ。街なかをゆっくり走らせている限り、特に刺激的な部分もなく至って普通に走る。

BMWの肘をドアに乗せて運転するような着座姿勢とは異なり、SLK32の着座位置はグラスエリアに隠れるように低い。クルマとのコミュニケーションを期待するが、ステアリングホイールからはスポーツカーらしい情報量は得られない。攻め立てて走る気持ちは湧いて来ないだろう。

しかしトルクが豊かなSLK32は、トラクションコントロールを効かせるのも簡単。コーナリング時のハンドリングは高速でも低速でも安定志向で、引き締まった足まわりのおかげでBMWより安心感も強い。

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