マツダ・ロードスターに触発された2台 Z3 MロードスターとCLK32 AMG 後編

公開 : 2019.10.27 16:50  更新 : 2022.08.08 07:52

スポーツカーなZ3、グランドツアラーなCLK

インテリアも、1990年代のメルセデス・ベンツらしく落ち着いた雰囲気。大面積の黒いプラスティックに、光沢のあるウッドパネル。ステアリングホイールは、自分が小人になったかのように大きい。気持ちを高ぶらせる要素はないが、妥当な高級感はある。

クーペ・カブリオレ人気につながった知的なフォールディングルーフ「バリオルーフ」は、内張りも美しく施してある。ルーフを閉じれば完璧なクーペのようだ。一切レバー類を操作することなく、スイッチを押すだけでトランクリッドへと滑り込むように折り畳まれる。

メルセデス・ベンツSLK32 AMG
メルセデス・ベンツSLK32 AMG

Z3 Mロードスターのソフトトップも電動だが、折り畳んだ状態ではフレームが露出したまま。フロントガラス上部のレール・キャッチは、折り畳む前にドライバー自らが外すことになる。ソフトトップはトノカバーで覆い隠す必要もあり、両者の性格の違いを物語っている部分でもある。

2001年にAUTOCARがZ3 MロードスターとSLK32 AMGとを比較した時、勝利したのはSLK32 AMGの方だった。だが2019年、天気の良い休日を楽しむために購入すなら、BMWを選ばない方が難しい。

不足気味のボディ剛性と、少し期待はずれのステアリングフィールを備えているが、生々しいTVRのような興奮がBMWには備わっている。よりペースを速め、より長い時間運転を楽しみたいと思わせてくれる。

メルセデス・ベンツSLK32 AMGもBMW Z3 Mロードスター並みに速いし、実力もある。だが同種類の運転する楽しさは与えてくれない。力強さを活かして、長距離の自動車旅行をハイペースでこなすような乗り方が適している。妻を週末に誘うのには丁度いいかもしれない。実用性も高く角の取れた性格だから、長距離走行もしやすい。

同時期のポルシェボクスターも捨てがたい

BMW Z3 Mが、自社の歴史を振り返ったロードスターだったのに対し、SLK32 AMGは、コンバーチブルの将来を描いたクルマだった。どちらも捨てがたいが、同価格帯で手に入る2019年の選択肢はこれだけではない。

英国の中古車店のショールームには、9万5000kmの走行距離で美しいボディコンディションのボクスターが、1万ポンド(133万円)で並んでいた。一方でこのSLK32 AMGは1万2500ポンド(166万円)で、Z3 Mロードスターは1万6000ポンド(212万円)。

BMW Z3 Mロードスター
BMW Z3 Mロードスター

2001年と同様に今も変わらず、BMWとメルセデス・ベンツは良きドイツブランドのライバル関係にはある。中古車になっても同じだ。だが価格で並ばれてしまうと、どうしてもポルシェを差し置いて選択する理由を見つけるのは難しいのだった。

Z3 MロードスターとSLK32 AMGのスペック

BMW Z3 Mロードスター(1998年〜2002年)のスペック

価格:新車時 4万570ポンド(541万円)/現在 1万6000ポンド(212万円)
生産台数:1万5000台
全長:4025mm
全幅:1740mm
全高:1306mm
最高速度:249km/h
0-96km/h加速:4.8秒
燃費:7.2km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1402kg
パワートレイン:直列6気筒3201cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:321ps/7400rpm
最大トルク:35.6kg-m/3250rpm
ギアボックス:5速マニュアル

メルセデス・ベンツSLK32 AMG(2001年〜2004年)のスペック

価格:新車時 4万3000ポンド(571万円)/現在 1万3000ポンド(172万円)
生産台数:4333台
全長:3995mm
全幅:1715mm
全高:1289mm
最高速度:249km/h
0-96km/h加速:4.9秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1495kg
パワートレイン:V型6気筒3199cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:354ps/6100rpm
最大トルク:45.8kg-m/4400rpm
ギアボックス:5速オートマティック

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