【なぜこのタイミング?】ハマー、1000psのEVとして復活する背景 考えられる2つのワケ

公開 : 2020.02.02 11:30  更新 : 2021.10.09 23:54

なぜこのタイミングでの市場導入なのか

ところが、2019年後半には、テスラがEVのサイバートラックを発表し予約販売を開始。

年が明けてフォードがEVトラック量産化を公表したと思ったら、今度はGMで、しかもハマーでEVだという。

米テスラは、ピックアップ・トラックの新型車「サイバートラック」を初公開している。
米テスラは、ピックアップ・トラックの新型車「サイバートラック」を初公開している。

こうした、ここ1~2か月の各社発表を見る限り、アメリカでEVブーム到来、とも見えなくもない。

だが、どうも妙なのは、テスラも、フォードも、GMも、なぜこのタイミングでの市場導入なのか、なぜ小型車ではなくフルサイズピックアップトラックや、フルサイズSUVでのEVなのか、明確な理由を明らかにしていない。

テスラのイーロン・マスクCEOも、フォードとGMの幹部も「地球環境のため」「ゼロエミッションなのに、大迫力の加速感が凄い」といった抽象的な表現に終始している。

こうした不自然な形で、アメリカでEVブームが演出されている裏には、大きく2つの理由があると、筆者(桃田健史)はみる。

ブランド戦略とトランプ対策

1つめは、ブランド戦略だ。

2010年代後半からの世界的なEV普及のトレンドは、前述した中国/アメリカの政策に加えて、ドイツのフォルクスワーゲングループが中期経営計画の中でブチ上げた、EVシフトの影響が大きい。

ポルシェ・タイカン
ポルシェタイカン

2020年代前半に、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェなど傘下の全ブランドで電動化を強化。ポルシェ初のEV、タイカンが登場した。

その他、ジャガーランドローバーも積極的にEVシフトを進めるなど、欧州プレミアムブランドで、ブランド価値を上げるための、1つの手段としてEVを利用し始めた。

こうした流れに、フォードやGMも乗ろうというのだ。フォードは、マスタングで往年のマッハ1になぞらえた、マッハE。GMはハマー復活と、ネーミングによるブランド戦略に打って出た。

もう1つが、トランプ政権への対応だ。オバマではEVや太陽光発電の開発に対して、グリーンニューディール政策を掲げて、EVベンチャー支援に積極的だったが、多くの事案で融資が焦げ付いた。

そんな失策を嘲笑うように、トランプ政権になるとEV支援策は一気に縮小した。

それが、今年(2020年)11月の大統領選挙を控えて、トランプ陣営の支持率が高い自動車労組などに向けて、新たなる雇用創出の機会としてEVを、しかもアメ車らしさが際立つピックアップやSUVでのEVを提唱しているのだと考えさせられる。

結局、ハマーEVには、政治の匂いが強い。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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