【狂気のレーシング・ミニ】ツインカム・ターボからツイン・エンジンまで 前編

公開 : 2020.02.15 07:50  更新 : 2020.12.08 10:55

4. スペシャル・チューニング 4WDミニ

舗装路とオフロードの混ざったコースを走行するラリークロスは、1970年代に一度人気が高まる。近年も人気だが、今以上にエキゾチックなマシンが参戦し、優勝を争っていた時期があった。

この1台限りの4輪駆動仕様のミニはその頃に、英国アビンドンを拠点とするスペシャル・チューニング・デパートメントが生み出したクルマ。製作期間はわずかに9日間だったという。

スペシャル・チューニング 4WDミニ
スペシャル・チューニング 4WDミニ

テレビ放映の予定があったリッデン・ヒル・サーキットでのレースに間に合わせるため、バジル・ウェールズと彼のチームは、ゼロから急ごしらえで完成させたという。

ミニのボディを被っているが、4輪駆動のミニ・モーク・プロトタイプの構成部品が組まれ、サスペンションは全面的に交換されてある。エンジンは1293ccのAシリーズで、当時最新の8ポート・クロスフローのSTシリンダーヘッドと、アマル・キャブレターを4基掛け。最高出力は6000rpmで125psを発生する。

レーサーのブライアン・チャットフィールドは、1971年5月、このモンスターの運転を任される。WD&HOウィルズ・ラリークロス選手権では、ヒート優勝に加え総合2位を達成。その後もいくつかのレースを戦っている。

マニアな小ネタ

デイビッド・エンジェルは1972年のオランダ・ラリークロス選手権で3ラウンド優勝を挙げている。だが、1973年シーズンを前に、ラリークロスは4輪駆動が禁止されてしまった。

5. ビータ・ミニ-ビュイック

ミニのレース界では、スター級ドライバーとして一時期地位を確立していたハリー・ラドクリフ。クルマの設計も手掛け、BRTデベロップメンツ/ブリティッシュ・ビータ・レーシングチームの一員でもあった。

1968年のヨーロッパ・ツーリングカー選手権の参戦に向けて、チームはミニ-ビュイックを生み出した。このマシンは参加車両の中でも、かなりの評判の悪さではあったのだが。

ビータ・ミニ-ビュイック
ビータ・ミニ-ビュイック

初戦に挑んだのは1964年。1071ccのクーパーSをベースにしていたが、エンジンは3.5Lのビュイック製V型8気筒がリアシートのあった場所に積まれている。

前輪駆動で、ホイールは13インチ。ジャガーEタイプのトランスミッションとデフを改造して取り付けてある。評判とは裏腹に、技術面ではかなり真剣に取り組まれたマシンで、共同監督のジェフ・グッドリフとともにラドクリフはレースやヒルクライムに参戦。

四角いボディに詰め込まれたエンジンは、都度派手なタイヤスモークを立ち上げ、レースファンの人気は高かった。だが、レーサーのブライアン・レッドマンはテストドライブの感想として、「死を招くマシン」 だと話している。恐ろしい。

マニアな小ネタ

初めての公道でのテスト走行中に、変速すると予期せず左側へクルマは向きを変えた。ミニ-ビュイックはそのまま道路を横断し、バス停で待つ人を驚かせながら、庭に突っ込んだという。

続きは後編にて。

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