御年123歳のフランス車 グラディエーター 10HP(1) 自転車から自動車へ 風雨を遮るものはないに等しい

公開 : 2026.05.10 17:45

生産から123年目を迎えた、グラディエーター 10HP。76年前に購入したティミス家は、手を加えながら毎年ベテランカー・ランへ挑んでいます。家族を結びつける旧車へ、UK編集部が試乗です。

自転車の生産で創業したグラディエーター

1903年式のグラディエーター 10HPを、76年間も維持するティミス家。ロンドンからグレートブリテン島南岸、ブライトンを目指すクラシックカーレースの「ロンドン・ブライトン・ベテランカー・ラン」には、60回も参戦したそうだ。

リチャード・ティミス氏が、ある日のハプニングを振り返る。「帰り道にグラディエーターを載せたトレーラーが外れて、牽引していたバンへ追突したことがありました」。そんな事故もくぐり抜け、123歳を迎えたクルマは今も現役にある。

グラディエーター 10HP リア・エントランス・トノー(1902~1903年/英国仕様)
グラディエーター 10HP リア・エントランス・トノー(1902~1903年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

グラディエーターというブランドは、AUTOCARの読者でも恐らく殆どがご存知ないはず。19世紀末から30年ほど、英国とフランスの友好関係を表すように存在していた。

ソシエテ・グラディエーター社は、ポール・オコック氏とアレクサンドル・ダラック氏によって、1891年にパリ郊外で創業。後に自動車製造へ進出した多くのメーカーと同様に、自転車の生産で歴史は始まった。

生産の8割がドーバー海峡を渡り英国へ

自転車は好調に売れ、ダラックは株式を売却し、自動車製造へ転身。他方、グラディエーター・ブランドはダンロップの創業者、ハーヴェイ・デュ・クロス氏と、その関係企業が買収。クレマン・グラディエーター&ハンバー社として、体制が一新される。

しばらく自転車の製造は続けられたが、世間の流れへ押されるように、自動車製造へ進出。1899年に、単気筒のアスター社製エンジンを載せた小型車が発表される。生産数は順調に増え、1901年にはパリ北西部に2番目の工場が用意された。

グラディエーター 10HP リア・エントランス・トノー(1902~1903年/英国仕様)
グラディエーター 10HP リア・エントランス・トノー(1902~1903年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

そのクレマン・グラディエーター&ハンバー社の成長を支えたのは、英国市場だった。デュ・クロスは、英国にモーター・ビークル・カンパニー社を設立。1903年前後には、生産された約1000台の8割、およそ800台がドーバー海峡を渡っていた。

英国で運転免許が義務付けられた1903年

歴史を遡ると、クレマン・グラディエーター&ハンバー社の発展は、後に締結される英仏協商を先取りしたようなものといえた。両国間で振興する貿易関係の、象徴のようなブランドだった。別会社による買収を経て、1920年には消滅してしまうが。

ティミス家が保有するグラディエーター 10HPは、その貴重な生き証人。100年以上前の量産車が、世代をまたいで維持されている。

グラディエーター 10HP リア・エントランス・トノー(1902~1903年/英国仕様)
グラディエーター 10HP リア・エントランス・トノー(1902~1903年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

正式なモデル名は、10HP リア・エントランス・トノー。パリ郊外のル・プレ・サン・ジェルヴェ工場をラインオフした1台で、最盛期には8000台前後が英国の公道を走っていたと想定される。恐らく、路上のクルマの1割を占めていたはず。

また1903年といえば、英国では運転免許が義務付けられた時期。制限速度は時速20マイル(約32km/h)へ制限され、正式な車両登録制度も導入された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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