【Iペイスの新しい挑戦者】新型 アウディeトロン・スポーツバックへ試乗

公開 : 2020.04.08 10:20  更新 : 2020.04.08 11:29

機敏な加速に抜きん出た洗練性

eトロン・スポーツバックの車重は2480kgと軽くはなく、Dレンジでの発進は力強いが、ロケットダッシュと呼べるほどではない。クルマが進み始めれば、慣性が小さくなり中間加速はかなり鋭くなる。

アクセルペダルを踏み込むと、英国の高速道路の制限速度(112km/h)以上のスピードも、簡単に到達する。Sレンジにすれば、瞬発力が増強。レスポンスも早まり、たくましい加速感だけでなく、全体的な運動性能も高まる。

アウディeトロン・スポーツバック55(欧州仕様)
アウディeトロン・スポーツバック55(欧州仕様)

0-100km/h加速に要する時間は5.7秒。通常のeトロンと同様に、実際はもう少し鋭く感じられる。199km/hのリミッターに当たるまでパワーが弱まる感覚もない。

ちなみにIペイスの場合、2基のモーター合計での最高出力は399ps、最大トルクは70.6kg-m。0-100km/h加速は4.8秒で、同じく最高速度は199km/hとなる。

エネルギーの回生システムの強さは3段階に調整が可能。ナビゲーションの地形データをもとに、自動で調整もしてくれる。減速時やアクセルオフでの滑走時にどれだけエネルギーを回収できるかは、ドライバーの技量にも多少は影響する。

eトロン・スポーツバックの強みとなるのが、抜きん出た洗練性。筆者はEVに乗る機会も多く、その静かさには慣れていたが、アウディの音響性能は新次元といえるものだ。

高速道路であっても、滑らかに転がる感触に加えて、路面からのノイズや風切り音が綿密に抑えられている。モーターやパワーコントローラーからのノイズもほぼなく、車内は完全に隔離された感がある。リラックスして長距離をドライブできるだろう。

中高速のコーナリングが特に光る

路面を問わない優れた運動性能を考えると、ステアリングホイールへ伝わる感触の薄さは残念。速度感応式の電動パワーステアリングはシャープで、重み付けにも安心感がある。だが、手のひらに伝わるフィードバックに欠けている。

それでもeトロン・スポーツバックはドライバーを楽しませてくれる走りを備えている。ボディーロールは小さく、後輪駆動らしい操縦特性を備え、中高速のコーナリングが特に光る。

アウディeトロン・スポーツバック55(欧州仕様)
アウディeトロン・スポーツバック55(欧州仕様)

重量物は車両中心の低い位置に集中し、SUV基準でいえば低めの車高だから、重心高も低い。ドライバーに自信を与えてくれる、確実な操縦特性を生んでいる。

減速時や急旋回時の重心移動は大きいはずだが、姿勢制御も素晴らしい。標準装備のエアサスペンションが備える、減衰力と素早い反応特性によるものだろう。バランスを崩すことがない、漸進的な動きも見逃せない。

電動化に合わせた新しい4輪駆動システムのクワトロと、左右のリアタイヤ間を制御するトルクベクタリング機能が、確かなトラクションを生んでいる。試乗車の255/50というタイヤはオプションだが、コーナリング・グリップも高い。

アンダーステアやスタビリティコントロールなどの介入なしに、かなりのスピードでコーナーへ食らいついていく。そのまま落ち着きを崩すことなく、コーナー出口では思い切ってアクセルペダルを踏み込める。

英国の場合、21インチのアルミホイールが標準装備。お好みで、オプションで22インチも選択できる。ドイツ仕様では20インチも選べる。優れたシャーシーセッティングにより垂直方向の動きは上手になだめられ、乗り心地は感心するほどだった。

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