【実物を見て分かった】マクラーレン・エルバ 6つの見どころ デザイン・プロトで解説

公開 : 2020.04.08 07:20  更新 : 2021.10.11 09:31

マクラーレン・エルバには、6つの見どころがありました。ドアの内部を貫くエアフロー、内装の素材、ニルバーナ・エグゾースト。写真でご紹介します。

スパイダー・モデルと、どう違う?

text&photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)

英国のスーパーカーメーカー、マクラーレンが公開した約2億円の限定モデル「エルバ」。日本上陸したデザイン・プロトを取材して分かった、注目点とメカニズムをお伝えしよう。

英マクラーレン・オートモティブが創業から送り出してきたモデルは、すべてクローズド・コクピットで、オープンタイプのスパイダーもその派生形だった。

エルバを象徴するのがオープン・コクピットだ。
エルバを象徴するのがオープン・コクピットだ。

そうした流れの中で送り出されたエルバは、いわゆる“ロードスター”とは一線を画す“オープン・コクピット”なのである。

ロードスターとの違いはなんだろう? それはウインド・スクリーン、ルーフ、サイドウインドウを持たないピュアなスタイリングにある。

マクラーレンはそのコンセプトを「ドライバーの五感で最高のドライビング・エンゲージメント」を味わうためのものと、話している。

それを理解するためのキーが、現行アルティメット・シリーズにおける「エルバ」の位置づけ。

「セナ」は最もサーキット走行を突き詰めたモデル。「スピードテール」は最高速を追及したモデル。その間に位置するのが「エルバ」であると説明された。

この立ち位置に、エキサイティングなオープン・エア・モータリングを融合させ、新しい価値を提供するのである。その走りのイメージは、「スカイダイビング」に近いという。

エアロ・プロテクションとは

前述のように、エルバ最大の特徴が、ウインド・スクリーンを持たないオープン・コクピットだ。

スクリーンをなくすことができたのは、マクラーレンが開発した世界初となるエアロ・プロテクション技術による「アクティブ・エア・マネーメント・システム(AAMS)」のおかげ。

フロントカウルに設置された可動式ディフレクターが上昇すると、流気はコクピット上部に流れる。これにより、乗員には一切風圧を感じさせない。
フロントカウルに設置された可動式ディフレクターが上昇すると、流気はコクピット上部に流れる。これにより、乗員には一切風圧を感じさせない。

ノーズから取り入れた流気はフロントカウル上面のグリルから排出される。その流気を、最大で150mm上昇するディフレクターにより、さながらウインドウ・スクリーンが存在するようにコクピット上部に流し、乗員には一切風圧を感じさせないエア・カプセルを形成するのだ。

一定の速度になれば、雨は吹き飛ばされて濡れることはないという。

なお、ドライビング中の飛び石はAAMSでも防ぐことはできないので、マクラーレンと協力関係にあるベル社のビスポーク・ヘルメットが、エルバには2個付属される。

そのサイズ、3m 長大なボディパネル

レトロなイメージを漂わすエルバだが、そこには最新のテクノロジーと最高の素材が用いられる。

フロントカウルは一体カーボン・ファイバー製で、その厚みはわずか1.25mm。

ボディパネルはすべてカーボン・ファイバー製で軽量化を実現。
ボディパネルはすべてカーボン・ファイバー製で軽量化を実現。

注目したいのが前輪後方に伸びる3mにも及びサイド・パネル。リアデッキで左右が繋がりコの字型になる巨大なボディパネルを採用。不要な継ぎ目がなくなることで、空力と軽量化に貢献した。

また、ドアはウインドウがないことから上下高を切り詰めてコンパクトに。その中には、サイドミラー付け根のインテークからエンジンに通じるエアダクトが通り抜けている。

ドア自体の開閉方法はディへドラル・タイプだ。

また、リア・エンドとエンジン上部に備わるグリルは、レーザー加工で製作されたメッシュ式グリル。フェアリング部分は手動で開閉でき、その中にヘルメット1個と小さなバッグを収めることができる。

ソフトトップは備わらず、駐車時には簡易式のカバーを使うことになる。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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