【勘違いも】トヨタやホンダが人工呼吸器の製造に乗り出すワケ 高い技術力/多様な研究で柔軟に

公開 : 2020.04.17 05:50

自動車メーカー各社の人工呼吸器の生産に向けた動きが増えています。まず知っておくべきは、工場停止で手が空いたから、人工呼吸器を作るわけではないということです。各社の直面している課題/展望をまとめました。

もくじ

人工呼吸器の生産 1つの「勘違い」
自動車メーカー 呼吸器の知見、なし
人工呼吸器 日本より米が先だったが
新領域への挑戦 高い技術力で柔軟に

人工呼吸器の生産 1つの「勘違い」

text:Kenji Momota(桃田健史)

自動車メーカー各社で、人工呼吸器の生産に向けた動きがある。新型コロナ感染拡大の影響によるものだ。

こうした報道を見聞きして、多くの人が「勘違い」しているかもしれない。

2020年4月15日時点で、トヨタは全15工場28ライン中、5工場9ラインを稼働停止させている。写真は元町工場(稼働中)
2020年4月15日時点で、トヨタは全15工場28ライン中、5工場9ラインを稼働停止させている。写真は元町工場(稼働中)

まず、「工場が止まっているからクルマの代わりの商売として作る」という、勘違い。

確かに、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スズキ、ダイハツなど、自動車メーカー各社の国内工場は現在、その一部が稼働を停止している。

理由は、大きく2つあり、1つは海外から輸入している部品が納入されないから。もう1つは、従業員の中で新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応が出たため、工場内の消毒などが必要になったためだ。

また、スバルなど日本から海外への輸出が多い工場では、アメリカや欧州での需要急減によって生産調整のために工場の稼働を止めるケースもある。

国内需要についてはまだ、欧米と比べて大きな落ち込みがないため、明確な生産調整に至っていない。

こうした止まった製造ラインで、人工呼吸器を流す。または、製造ライン従事者の手が空いたので、人工呼吸器を作る部門にまわる、ということではない。

人工呼吸器の生産は、既存の自動車生産とは別枠として、自動車メーカー各社が検討していることである。

自動車メーカー 呼吸器の知見、なし

技術については「自動車メーカーはEV(電気自動車)や各種の電装部品に関して優秀な技術力があるから、人工呼吸器を早期に開発/生産できるはず」という見方も、勘違いだと思う。

この点について、トヨタの豊田章男社長が2020年4月10日、日本自動車工業会・会長の立場で次のように発言している。

トヨタの豊田章男社長。2020年4月10日。
トヨタの豊田章男社長。2020年4月10日。

「人工呼吸器の製造を期待する声があることも認識しております」

「しかし、これは、人の命に直結する医療器具です」

「自動車も人命にかかわる製品ですので命に関わるモノづくりが、どれだけ難しいかをわれわれは認識しています」

「簡単なことではありません」

「まずは、医療機器を作っている方々のところに行き、その生産を1つでも増やせるような、生産工程の改善など、われわれのノウハウを活かせるサポートを始めてまいります」

自動車産業は、数万に及ぶ部品をサプライチェーンが製造し、効率的な物流網によって最適なタイミングで最終組立てを行い量産化している。

こうした産業構造に裏打ちされた、生産技術を人工呼吸器など精密医療機器に応用する手助けをするのだ。

この他、自動車本業を活用する事例としては、ホンダが感染者搬送用でオデッセイ/ステップワゴンの特装車を仕立てる。

運転席と荷室との圧力差を作り、車内感染を予防するシステムを搭載する。