【夢に描いた2ドアクーペを現実に】シトロエンDSクーペ・グラン・パレ 後編

公開 : 2020.05.02 16:50  更新 : 2021.03.05 21:42

複数台を制作する可能性もある

運転席周りは、丸みを帯びたメーターパネルなど、更に改良を受ける可能性があるという。1970年にDSへ導入された、3連メーターは、1つの可能性。あるいは、スラウの工場で作られていた、2連メーターという方法もあるだろう。

「もっとボディと一体感のあるものにしたいと思っています。アフターマーケットのメーターのようにはしたくありません。高価でも、アクセサリー感は残りますから」

シトロエンDSクーペ・グラン・パレ
シトロエンDSクーペ・グラン・パレ

このDSグラン・パレは、1台限りのクルマとなるのだろうか。「初めは、われわれ自身が楽しむために作ったクルマでした。ですがクルマに投じた時間や手間、情熱を考えれば、1台以上を作るという考えも理にかなっています」

「特に、仕上がった時の大きな喜びを考えれば。おそらく年間に4・5台は生産できると思います。完璧な状態で。1台の費用は15万ポンド(2025万円)位になりそうですが、はっきりはわかりません」

今回の取材が終わってから、ゴドフロイのもとへ2台目の注文が入ったという。フランスの場合、公道を走るには公認を受ける問題が残っている。法規に順応性のある英国からの問い合わせの方が、現実味は高いようだ。

ゴドフロイとクリストフにとっては、喜びを超えて重要な意味を持つクルマとなった。「多くの人に興味を持ってもらえることが、何より嬉しいです。デザイナーの仕事として大切なことは、自身の感情を多くの人へ伝播させること。わたしの感情は、多くの人々と共有されているようですね」

番外編:ほかにも存在するDSのクーペ

シトロエンはDSのクーペを作ることはなかった。歴史を知れば、オープンボディをコーチビルダーのシャプロン社に依頼することは当然の流れだった。

1930年代から1950年代にかけて作られていた、シトロエン・トラクシオン・アバンのロードスターが作られたのは、恐らく4327台。さらにクーペは728台と少なかった。その教訓が、シトロエンには残っていたのだ。

ヘクター・ボサートが手掛けたGT19
ヘクター・ボサートが手掛けたGT19

ロードスターをシトロエンが作っても、商業的な勝算はなかったのだろう。クーペは、経営陣の視界にも入らなかったのかもしれない。

フラミニオ・ベルトーニが描いたDSクーペのスケッチは、ドローイングボードから離れることはなかった。パーソナルなボディを求めるドライバーは、シャプロン社を頼った。

パリ郊外のルヴァロアペレに拠点を構えていたシャプロン社は、3種類のモデルをベースに、ハンドメイドで70台を超える4シーターのクーペを生み出した。2+2のル・ダンディと呼ばれたクーペも50台を製造している。

ゴドフロイが手掛けたクルマに最も近い姿を持つのが、1958年から9台が作られた、4シーターのル・パリ。その後にも、コンコルドやル・マンという4シーター・クーペをシャプロン社は作っているが、そちらは角張った形状のルーフを備えていた。

ほかにも、ヘクター・ボサートが手掛けたGT19と呼ばれるクーペもある。オリジナルのシャシーは42cmも短くされ、デザイナーのピエトロ・フルアが手掛けたスタイリングを得ていた。さらに、リコウやバルベロなどが手掛けたクーペが存在している。

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