シトロエン・トラクシオン・アバン【UK中古車ガイド】(2) 年式感じない快適性 ID用エンジンの換装例も 価値上昇の可能性アリ

公開 : 2026.07.18 17:50

前輪駆動にモノコックを採用し、20世紀の量産車として高い評価を与えるべき1台がシトロエン・トラクシオン・アバン。優れた走りで日常性も高いクラシックを、UK編集部が振り返ります。

ID用エンジンへの換装は価値あるアップグレード

シトロエン・トラクシオン・アバンのエンジンは、多くが1911ccの4気筒。だが小排気量の4気筒ユニットも存在し、2867ccの6気筒も人気は低くなかった。メンテナンスを怠ると、ホワイトメタル製のエンジンベアリングを中心に摩耗が進んでしまう。

価値あるアップグレードといえるのが、シトロエンID用の強力なエンジンへの換装。4速MTへの交換も悪くない。電装系は、英国製は電圧12Vだったが、フランス製は6V。昇圧するとライトが明るくなり、夜間の運転が楽になる。オルタネータ化も望ましい。

シトロエン・トラクシオン・アバン(1934〜1957年/フランス仕様)
シトロエン・トラクシオン・アバン(1934〜1957年/フランス仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

購入前の試乗では、排気ガスが過度に曇っていないか、エンジンオイルやガソリン、クーラントが漏れていないか、丁寧に観察したい。ノッキング等による異音にも注意したい。タイミングチェーンのノイズは、過度に大きくなければ問題ない。

キャブレターは、ソレックスがオリジナル。ウェーバー社製への交換も、悪くない選択だろう。オーバーヒートすると、ヘッドガスケットが痛む。ヘッドボルトを締めすぎると、ブロックにヒビが入る。エンジンマウントの劣化は、エンジンの不調に繋がる。

優れた操縦性と快適性、動力性能を享受できる

3速MTとアクスルまわりは、摩耗から生じるオイル漏れや異音、振動などがないか確かめたい。変速時にギアの回転数を調整する、シンクロメッシュの調子も気にかけたい。クラッチの異常振動は、トランスミッションを傷める。

サスペンションのブロックブッシュは、交換が高額になりがち。摩耗具合や、タイヤの片減りがないか確かめたい。現存例の一部では、最新のCVジョイントに交換されている場合もある。ブレーキは、調子が良ければしっかり効く。

シトロエン・トラクシオン・アバン(1934〜1957年/フランス仕様)
シトロエン・トラクシオン・アバン(1934〜1957年/フランス仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

好調なトラクシオン・アバンなら、年式を感じさせない締まりある操縦性と乗り心地、動力性能や安定感を享受できる。3速しかなくても、燃費も良い。デフのギア比を調整すれば、高速道路も快適にこなせる。

名車だけに、英国には熱心なオーナーズクラブも存在する。有用な情報だけでなく、部品販売や特殊な工具の貸し出しにも対応してくれる、親切なメンバーが心強い。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

3分割のサイドシルや前後のホイールアーチ、サスペンションやステアリングラックのマウント付近、フロアパネル、ドアやトランクリッドの底面、リアのバランスパネルなどは錆びやすい。フロントのアーム部分やドア開口部などは、事故に合うと歪みがち。

エンジンルーム後方やフロントピラー付け根部分に、亀裂が入る場合がある。ロングホイールベース・ボディでは、リアドア後方のヒビ割れにも注意したい。

エンジン

シトロエン・トラクシオン・アバン(1934〜1957年/フランス仕様)
シトロエン・トラクシオン・アバン(1934〜1957年/フランス仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

エンジンは概ね堅牢。初期の1302ccと1529ccの4気筒ユニットは珍しい。1628ccの7Cユニットは、1941年まで生産されている。1911ccユニットは、年式により馬力が異なる。2867ccの6気筒は、驚くほど強力だ。

いずれも、排気ガスの過度な曇り、オイルやクーラントの漏れ、異常振動、ノッキングなどがないか確かめたい。排気系のヒビ割れや、キャブレターの劣化にも注意したい。

トランスミッション

3速MTは弱点の1つ。亀裂やフルード漏れ、異音に注意したい。ウォーターポンプからクーラントが漏れると、ベルハウジング内へ染み込みクラッチを傷める。

インテリア

フランス製の場合、オリジナルの部品はフランスから取り寄せるのが手っ取り早い。英国製のウッドやレザーは、まだ探せば見つかる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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