【夢に描いた2ドアクーペを現実に】シトロエンDSクーペ・グラン・パレ 後編

公開 : 2020.05.02 16:50  更新 : 2021.03.05 21:42

カースタイリストのゴドフロイと、コーチビルダーのビアーが目指したのは、製造されることのなかったシトロエンDSの2ドアクーペ。1万時間以上をかけて完成した端正なボディには、思わず見惚れてしまいます。

完成までに1万時間以上を投じた

text:Jon Pressnell(ジョン・プレスネル)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ジェラール・ゴドフロイがデザインした、DSグラン・パレ。「車体はとても強固に仕上がっています。窓を完全に下げて走っても、きしみ音1つしませんよ。剛性はオリジナルより遥かに高いです。もし大きな事故にあったら、その差は歴然でしょう」

「仮に横転するような事故でも、屋根は潰れないはずです。DSグラン・パレは遥かに安全です。またDSのボディは、常にサビに悩まされていました。このクルマには、構造部分が仕上がった段階で、錆止め処理を行っています」 と説明するゴドフロイ。

シトロエンDSクーペ・グラン・パレ
シトロエンDSクーペ・グラン・パレ

車体の剛性は引き上げられているが、DSサルーンから増えた車重は10kgから20kgに留まっている。スチールで補強された部分は重くなっても、より軽量なグラスファイバー製のボディを持つからだ。

クルマの制作には相当な時間を要した。「クリストフは、仕上げたい期日に追われながら作業を進めました。わたしが死ぬ前に仕上げて欲しかったですから」 と73才のゴドフロイは冗談混じりに話す。

「2014年から2019年にかけて、クルマを仕上げるのに1万時間以上を投じました。設計にはフルタイムで6カ月ほどかかっています。それだけでも5000時間です。そこからさらに、クルマを作り上げるのに6000時間はかかっています」

「この作業量は、DSグラン・パレを見て、同じことをしたいと考えた人を挫折させるかもしれませんね」 最も困難な部分は、ガラスの処理だった。リアガラスを含めて、すべてがイギリスのピルキントン社製だ。

インテリアデザインもすべて再考

クリストフによれば、サイドウインドウを正確に上げ下げさせることが難しかったという。それ以外の、すべてのディテールも一切おろそかにはしていない。

トランクリッドのヒンジは、綺麗に磨き込まれたアルミニウム製。標準のDSのデザインを反映する形状で、手作業で仕上げられた。「アイデアを実現するのに時間がかかりましたが、多くの人は、とても気に入ってくれるようです」 とゴドフロイ。

シトロエンDSクーペ・グラン・パレ
シトロエンDSクーペ・グラン・パレ

ボディの塗装は、フランスのシュテファン・シャンポー社。インテリアは同じくフランスの、ローランデブラーズ社が仕立てたタバコ・ブラウンのレザー。ボディとの素晴らしいマッチングを見せる。

細かい手直しが随所に施されている。ラジオは若干、ドライバー側に移動している。ダッシュボードの中央には、パワーウインドウの操作スイッチが付く。そのダッシュボードは、1961年製のDSのものだ。

「インテリアはすべて再考してあります。DSのインテリアは、ボディと同じ水準にはないと以前から感じていました。少し雑な印象がありましたし、違うデザイン処理に挑戦したいとも考えていました」 と振り返るゴドフロイ。

「ドアポケットは、オリジナルのDSのダッシュボードの造形を真似てあります。内装パネルは、シートバックのラインと同調するようにカーブを描いています。クロームモールは後ろに向けてなだらかに下降し、ボディのウエストラインに呼応しています」

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