【タフトは大丈夫!?】かつてのダイハツ・ネイキッド、販売を終えたワケ 繰り返す原点回帰

公開 : 2020.05.12 05:50  更新 : 2021.10.22 10:15

ダイハツ・タフトが6月下旬に発売されます。外観を見ると、スズキ・ハスラーのライバル車と受け取れますが、「ダイハツ・ネイキッドの復活」とも言えそうです。ネイキッド終売の背景を探り、何を学べるかを考えます。

タフトの前身? 20年前に販売されていた

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

6月下旬に、新型軽自動車のダイハツ・タフトが発売される。

ダイハツのホームページでは、既に内外装のデザインなどを公開しており、販売店では「5月下旬から6月には、価格を明らかにして予約受注を開始する」という。

ダイハツ・タフト(上)/ダイハツ・ネイキッド(下)
ダイハツ・タフト(上)/ダイハツ・ネイキッド(下)

タフトのボディスタイルを見ると、スズキハスラーのライバル車と受け取られるが、別の見方をすれば「ダイハツ・ネイキッドの復活」ともいえるだろう。

ネイキッドは1999年に発売された全高が1550mmの軽自動車で、開発のテーマは「自由自在にクリエイティブカー」であった。

外観は直線基調のシンプルなデザインで、ドアのヒンジを外側に露出させていた。

さらにフロントグリルやバンパーは、外側からネジで固定されている。擦った時などユーザーが自分で交換したり、好みの色彩にペイントできた。

フォグランプを備えた色彩の異なるバンパーも、ディーラーオプションで用意した。

内装にも特徴があり、荷室の床面地上高は490mmと低い。現行タントが580mmだから、ネイキッドは90mm下まわり、荷物を収納しやすかった。

後席は格納に加えて脱着も可能だから、さらに広い荷室にアレンジできる。後席の重さは1脚当たり8-9kgで、脱着の作業もしやすい。

荷室には専用の穴が開けられ、棚やネットを簡単に装着できた。開発のテーマ通り、ユーザーが工夫して自由自在に使えるように配慮されていた。

ネイキッドは20年以上前に発売されたが、外観はSUV風で、コンセプトも先進的だ。今のタフトやハスラーに近い。

それなのにネイキッドは、1代限りでフルモデルチェンジは受けず、2000年代前半に終了した。なぜ短命で終わったのか……。

今なら魅力 ネイキッドなぜ売れず?

ネイキッドが長続きしなかった背景には、販売の低迷があった。2000年代に入ってムーヴが1か月に1万6000台前後を売っていた時、ネイキッドは1000台程度であった。

今の感覚で見ると、ネイキッドはシンプルなカッコ良さと馴染みやすさを併せ持つが、約20年前は時期尚早と受け取られた。

スズキ・ワゴンR RR(2003年)
スズキ・ワゴンR RR(2003年)

当時は軽自動車ではムーヴやワゴンRのエアロ仕様が人気を高め、軽自動車サイズのSUVでは、小型/普通車を小さくしたようなパジェロ・ミニが注目されていたからだ。

今日のハスラーや近々登場するタフトは、SUVのスタイルを踏襲するが、デリカD:5やRAV4を小さくしたクルマではない。

あくまでも今の軽自動車の特徴とされる快適な居住性と優れた積載性を優先させ、そこにSUVのテイストを盛り込んでいる。

SUVである以前に、実用性の優れた軽自動車であるわけだ。

ところが20年前は、軽自動車の人気がそこまで確立されていなかった。

1998年の規格変更を経て売れ行きは伸びたが、ニーズの中心は、先に挙げたエアロミニバン風のムーヴやワゴンRだったり、大柄なSUVに似た軽自動車だった。

つまり軽自動車のサイズで立派に見えることが求められ、潔く割り切ったネイキッドは、当時のニーズには適さなかった。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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