【タフトは大丈夫!?】かつてのダイハツ・ネイキッド、販売を終えたワケ 繰り返す原点回帰

公開 : 2020.05.12 05:50  更新 : 2021.10.22 10:15

販売テコ入れ Fシリーズも失敗……

売れ行きが下がったので、2002年にはネイキッドにFシリーズを加えた。

角型ヘッドランプとメッキグリルを装着する豪華仕様だが、ドアのヒンジは従来と同じく露出しており、バンパーもネジで固定されている。

外観のバランスが悪く、自由自在にクリエイティブできるコンセプトとの間にも隔たりが生じていた。

後年、ネイキッドが発売された当初の開発担当者に、Fシリーズについて尋ねると以下のようにコメントした。

「ネイキッドは時代を先取りした軽自動車でしたが、商業的には成功しませんでした」

「そこで販売をテコ入れする必要が生じて、Fシリーズを用意しました」

「売れ行きを伸ばすために、豪華仕様を加えることは多いですが、ネイキッドの性格には合わずFシリーズは妙なクルマになってしまいました」

「売れ行きも伸び悩みました」

タフトに継承されたネイキッドの想い

2003年になると、ダイハツは初代タントを発売した。この時点では、後席側のドアは前席と同じ横開き式だ。

スライドドアではなかったが、全高が1700mmを超えるボディで車内は広い。後席をコンパクトに畳むと大きな荷物も積めた。外観の存在感も強く、一躍人気車になった。

ダイハツ・タント(2003年)
ダイハツ・タント(2003年)

タントが好調に売れると、ネイキッドはますます販売力を奪われて売れ行きも下がり、フルモデルチェンジすることなく生産を終えた。

ちなみに2000年頃は軽自動車の売れ行きが急増した時代で、新車として売られるクルマの30%を占めた。

1980年頃の軽自動車比率は20%、1990年頃は25%、2000年頃に30%の大台に乗り、今は37%に達する。

このように2000年以降の20年間で、軽自動車は身近な存在になり、売れ筋もホンダNボックス、タント、スズキスペーシアといった後席のドアをスライド式にしたタイプになった。

背の高い軽自動車を選ぶことが当たり前になり、改めて個性的な車種が求められるようになっている。

そこで人気を得たのが、2014年に発売(発表は2013年)された初代(先代)ハスラーだ。

小型/普通車のサイズダウンではなく、軽自動車の優れた空間効率を備えたSUVが認められる時代になった。

初代マツダロードスターを思い出す

同様のことは、5ナンバーサイズに収まるコンパクトSUVの現行ダイハツ・ロッキー、そのOEM車となるトヨタライズにも当てはまる。

今は好調に売れているが、1990年に発売されたかつてのロッキーは話題にならなかった。パジェロ・イオなど、ほかにも直線基調のコンパクトSUVが登場したが、売れ行きは伸び悩んだ。

パジェロ・イオ(1998年)
パジェロ・イオ(1998年)

当時コンパクトSUVで人気を得たのは、1995年発売の初代トヨタRAV4、あるいは2010年の日産ジュークなど都会的な車種が中心だ。

しかし近年では、都会的なSUVが膨大に増えて、次第に飽きられ始めた。そこに前輪駆動ながらオフロードSUV風のRAV4やライズが登場して人気を高めた。

スポーツカーでは1989年に発売されたマツダ・ロードスターを思い出す。

あの時代は、ツインターボ、4WD、4WS(4輪操舵)などクルマが急速にハイテク化して、自分で運転するというより「乗せられている」感覚の高性能車が急増した。

そこに素朴なロードスターが登場して、多くのクルマ好きが楽しさを見い出した。

今、同じようなことが軽自動車やSUVの世界で起こっている。

このような原点回帰を流れに沿って、求めやすい商品を開発すれば、人気車になる可能性がある。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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