【日本では想像できぬ意外なきっかけ!?】BMWやポルシェが巨額投資で自前サーキットを建設する理由

公開 : 2020.06.29 05:50

歯医者とディーラーには行きたくない

2000年代になり、自動車ディーラー各社が自前のウェブサイトを立ち上げ、新車在庫の詳細を公開するようになった。

アメリカの場合、日本のように注文販売ではなく、ディーラーがオプションなど各種装備品を組み込んだ状態で新車を在庫するのが一般的だ。

ユーザーとしては、サイト上で車両の個体を特定するVINナンバーを指定して、メールや電話で商談をしてしまう。

とはいえ、実物がディーラーにあるのだったら、なぜ車両そのものを確認せずに商談を進めるのか?

日本人なら当然、疑問に思うだろう。

ここに、日米でのカーディーラーに対する考え方の大きな違いがある。

「歯医者とカーディーラーには、行きたくない」。アメリカでは昔から、こんな言い回しがある。

歯医者は、治療が痛そうだし、なんとなく行くのに気が引けるから。

カーディーラーは、営業マンとの価格交渉を含めて、なにかと面倒だから。

そう言われてきた。

日本では、担当営業マンが接客、商談、契約、保険対応など一連の流れをひとりでこなす。一方、アメリカでは完全分業なのだ。また、装備品込みの在庫を売るのが基本なので、値引きについても幅が広く、商談中に担当者の提示額が何度も変わることがある。

そんな旧態依然とした販売体制に、若い世代を中心にユーザーの嫌気がさしたのだ。

マス広告よりもマンツーマンで深堀り

こうした状況についてBMW USA幹部は、ユーザーとメーカーとの関係を大きく見直すべき時期だとして、パフォーマンスセンターへの投資を決めたと説明。

その後に講演したポルシェ幹部も、BMWと同様な状況を改善するため、パフォーマンスセンターをアトランタで計画を進めていることを明らかにした。

一方、日本の場合、ユーザーとディーラー、またユーザーとメーカー(現地法人)との関係はアメリカの場合とは大きく違い、友好な関係にある。

その上で、ポルシェがエクスペリエンスセンター建設を進めている背景には、プレミアム系ブランドにおけるブランド戦略がある。

モーターショーによる、幅広い年齢や収入層への「マス(メディア)広告」ではなく、ユーザー層を絞り込んだマンツーマンでのブランド戦略。そこからSNSなどを通じた、横への広がりを狙っている。

近年は、フェラーリランボルギーニ、さらにマクラーレンなどがサーキット走行会を取材するケースが増えてきたが、さらに一歩踏み込んで、自前コースや施設を作るという動きの1つが、日本でのポルシェエクスペリエンスセンターとなる。

そもそものきっかけはどうであれ、日本でハイパフォーマンス系モデルを安心安全に楽しめる機会が増えることは、自動車産業界にとって大きなプラス要因だと思う。

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