【運転、上達してるかも】ひたちBRTで、レベル4自動運転バスを体験!

公開 : 2025.05.25 07:05

自動運転の普及は、今、どの段階まできているのでしょう? 茨城県で実際に運行されている自動運転バスを、森口将之がレポートします。

自家用車の自動運転実用化の前に

トヨタと、グーグルなどを擁するアルファベットの自動運転部門、ウェイモの提携が発表された。ウェイモの自動運転技術とトヨタのクルマづくりの知見を生かし、自家用車の自動運転技術の向上に役立てていきたいとしている。

だが、この協業によって、我が国において自家用車の自動運転の実用化が近づいたと考えるのは早計だろう。

BRT専用道は遮断機があり、一般道の侵入を防ぐ。
BRT専用道は遮断機があり、一般道の侵入を防ぐ。    森口将之

自家用車はいつでもどこでも自由に移動できる代わりに、交通のパターンは無限に近い。逆走や飲酒運転、ペダル踏み間違いなどによる暴走がニュースになるのは、これまで見たこともないシーンが次々に現れているからだ。

自動運転を司るAIは、こうした新しい事故にも的確に対応しなければいけないわけで、現時点ではそれは難しいと考えるのが自然だ。加えて日本はあらゆる機械に完璧を求める風潮がある。なので、遠い未来の話と考えるべきだろう。

では、日本の道路に自動運転のクルマが走る機会はしばらくないのかというと、そんなことはない。

ひとつは、昨年秋に国土交通省などの実証実験を紹介した大型トラック。そしてもうひとつが、路線バスなどの移動サービスだ。

いずれも走るルートが決まっているし、地域内の移動サービスは走行距離も短い。その部分だけインフラ対策を施せば、不測の事態に悩むことは少なくなる。加えて法整備も完了したことから、昨年から、国内でも移動サービスへのレベル4導入が増えている。

そのうち、茨城県日立市を走るひたちBRTのレベル4自動運転バスに乗るとともに、運行を担当する茨城交通の担当者に話を聞いたので報告しよう。

ひたちBRTに実際に乗ってみた

BRTとはバス・ラピッド・トランジット(バス高速輸送システム)の略で、専用レーンなどを用意することで、鉄道に近い定時性や速達性を実現したものだ。

似たような語感のLRT(次世代型路面電車システム)が、線路がなければ走れないのに対して、BRTは専用レーンが終わっても一般道に乗り入れて走り続けられるので、きめ細かいルート設定ができるというメリットもある。

運転席やセンサーの情報を映し出すモニター。
運転席やセンサーの情報を映し出すモニター。    森口将之

ひたちBRTは、日立電鉄の廃線跡を専用道として活用している。海沿いにある道の駅日立おさかなセンターから、JR東日本常磐線の大甕駅を経由して常陸多賀駅まで約8.7kmを結ぶ。うち約6.1kmが専用道だ。

ここでは2018年にレベル2の実証実験を始めて以来、さまざまな技術検証を続けてきた。その結果、今年2月にレベル4での営業運行が開始された。

自動運転区間は専用道内にある南部図書館〜河原子BRT停留所間で、国内最長のレベル4移動サービスにもなる。現時点では1台の車両が、平日のみ1日4往復する。当面は乗務員が運転席に座っての運行になる。

当日はおさかなセンターに向かい、始発のバスに乗った。南部図書館停留所に到着すると、乗務員が自動運転への切り替えを行い、すぐに発車した。ここからはハンドルを握らず、ペダルも踏まずに、専用道を進んでいく。

茨城交通の担当者によると、乗務員は特定自動運行主任者および保安員の教育を実施しており、自動運転区間では、主にシステムの監視業務を行うとのことだ。

専用道脇の歩道に歩行者がいると徐行するなど、安全性にはかなり気を遣っている様子。乗降客のいない停留所にも停車することも、普通のバスとの違いだ。ただし唐突な挙動はなく、ペダルやハンドルさばきはスムーズで、安心して過ごすことができた。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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