【7日間かけて日本基準へ】吉田拓生がマセラティ ジャパンPDIセンター探訪
公開 : 2025.05.26 08:05
今回、吉田拓生がイタリアのハイブランド、マセラティのPDIセンターの内側を初探訪。なかなか目にすることの叶わないそこには、世界基準を凌駕する職人技が溢れていました。
PDI、知っていても見たことはある?
自動車の世界には、四字熟語ならぬ『3文字のアルファベット』が溢れている。『PDI』はその中ではメジャーな方かもしれない。
PDIとは『プレ・デリバリー・インスペクション』の略。PDIセンターとは、日本に到着した輸入車の状態をひと通りチェックし、予備検査の取得までを行う重要な拠点なのである。

ということまでは知っていても、その現場を実際に見たことがある人はほとんどいないと思う。かくいう筆者も、これまで1度もその現場を見たことがない。
「弊社のPDIセンターをご覧になりませんか?」
今回、マセラティ ジャパンから興味深い提案をいただいたのだった。
同社のPDIセンターは、2019年に千葉県印西市に完成し、2020年から稼働している真新しい施設。クルマの輸送サービスで知られる企業、トランスウェブとのパートナーシップにより運営されている。
千葉ニュータウンの端、緑豊かな立地に忽然と現れる巨大な白い工場。0-100km加速のテストすらできそうな広さを誇る敷地に到着すると、その一角には、白いカバーを掛けられたマセラティがずらりと並べられていた。
このカバーは不織布のような分厚い素材でできているが、ガラスの部分は切り欠いてあるので、トランスポーターへの積み下ろし程度なら出来るようになっている。聞けばこれらの車両は、すでにPDI作業が終わり、出荷待ちの状態だという。
今回は、そこに至るまでのPDI作業全ての行程を見学できるという。まるで大人の社会科見学(?)、新型車を見るより興奮している自分がいた。
7日間の内訳、作業の要は五感にあり
今回の取材では、実際のPDI作業を、順を追って見ていった。
スタート地点は、敷地の奥に広がる広大なスペース。ここは港からトランスポーターで運ばれてきた車両が待機する場所だという。今回はちょうど車両が出払っていたのだが、マセラティのロゴが入ったトランスポーターを見ることができた。

実際に輸入された車両がPDIセンターに入ってから、予備検査を受けた状態で出荷されるまでの時間は、7日間だという。
1日目は、待機場所に並ぶ車両の輸送モードを解除することから始まる。白いカバーが剥がされると、さっそくペイントのチェックとなる。車両全体を照らすライトを備えた専用のブースでは、さらに手持ちのライトも使用して入念なチェックが行われていた。小さな傷は磨くだけで消すことができるが、大きな傷がある場合は3日目にペイントのリペア作業に回される。
2日目は、メカニカル部分である。1台ずつ2柱のリフトに架けられ、車体下やエンジンルームを目視でチェックする。
そこから、ドアの開け閉めの具合やインテリアの感触、さらには臭いといったものまで含め、五感を使った点検が行われるのである。多くの経験に裏打ちされた、細部に渡る確認作業。まさに真骨頂だ。
全ての機能をチェックした後、光軸の修正を含めた予備検査のための作業によって2日目が締めくくられるのだ。
これらの作業は、1台の車両につき、ひとりの検査員が担当するかたちで行われる。施設のキャパシティを鑑みると、1日で12台を仕上げることが限度だという。
PDIセンターはオートメーションの製造ラインこそないが、クルマが1列に並んで作業を待つ様子は自動車工場のそれによく似ているように思えた。
























