車椅子ドライバーに操作しにくいEV充電器が問題に 英国 「後回しにされている」

公開 : 2025.05.26 06:45

2035年までにエンジン車の新車販売禁止を目指す英国で、EV用充電インフラの課題がいくつも浮き彫りになっています。障害のある利用者にとってのアクセシビリティや、インフラ整備の地域格差などが問題視されています。

邪魔な縁石、重い充電ケーブル

EVの普及拡大を目指す英国だが、障害のあるドライバーにとって利用しやすい充電ポイントが少なく、「充電設備の導入において、障害のあるドライバーの利益が後回しにされている」と批判されている。

英国の決算委員会は、国内のEV充電インフラに関する調査結果をまとめた報告書で、1万5000基ある急速充電および超急速充電ポイントのうち、運輸省(DfT)が障害者ドライバーの利用体験を改善するため、充電器の安全性とアクセシビリティを向上させる目的で策定した「BSI PAS 1899」規格に完全に準拠しているものは1つもないと指摘した。

英国の充電ポイントは障害のあるドライバーにとって利用しづらいものになっているという。
英国の充電ポイントは障害のあるドライバーにとって利用しづらいものになっているという。

障害のある利用者が直面する課題について、委員会は次のように説明している。

「2035年までに、135万人の障害のあるドライバーが公共充電ポイントに部分的または全面的に依存すると予想されているが、多くの充電ポイントやその周辺環境には、利用を困難にする要素がある」

具体的な課題として、車椅子利用者にとって邪魔な障害物(縁石など)の近くに充電ポイントが設置されていることや、ケーブルの重量が重すぎること、コネクタを接続するために強い力が必要であることが挙げられた。

報告書はさらに、「標準規格の普及に関する問題を解決しなければ、公共充電ネットワークは、障害のあるドライバーのニーズを満たさないまま発展し続けることになるだろう」と結論付けている。

この調査結果に対し、PAS 1899規格を充電ポイントの法的基準として認定するよう提言してきた慈善団体『モビリティ財団』のナイジェル・フレッチャー代表は、最終的には政府の判断だとしつつも、「公共充電サービスの事業者は、インフラのアクセシビリティを確保する責任を負うべきだ」と主張した。

モビリティ財団は委員会の報告書に同意しつつも、アクセシビリティに関するデータ収集・共有の義務が事業者にないため、基準に準拠した充電ポイントが「存在しない」という主張を検証できないと述べた。ただし、その数が少ない点には同意した。

例えば、充電事業者のインスタボルト社は3月、ハンプシャーに新しい超急速充電施設を開設した。44基の充電ベイはいずれも、障害のある利用者のアクセスと安全性を向上させるため、標準的な充電ベイよりも広くなっている。

ウィンチェスターにあるスーパーハブでは、各ベイの周囲に最大1.8mの車椅子移動スペースが確保されている。さらに、支払い端末と画面は車椅子利用者にとって使いやすい高さに設置されており、充電器から伸びるスイングアームが充電ケーブルの重量を支えている。

一方、充電事業者のオスプレー社は、2022年の基準の公表に先立ち、英国初のアクセシビリティに配慮した急速充電ハブを立ち上げたと発表した。同社はその後、既存の充電施設にも改良を加え、充電ベイの拡大、縁石の撤去、アクセシビリティに配慮したハードウェアの追加などを実施した。

記事に関わった人々

  • ジョン・エバンス

    John Evans

    役職:特派員
    フリーランスのジャーナリストで、AUTOCAR英国編集部の元スタッフ。姉妹誌『What Car?』誌の副編集長や『Practical Caravan誌』の編集長なども歴任した。元自動車ディーラーの営業マンという経験を活かし、新車・中古車市場や消費者問題について幅広く取り扱っている。近年は、これらのニュースや特集記事に加え、アイスクリーム・ワゴンのDIY方法から放置車両の探索まで、さまざまな記事を寄稿している。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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