【カムリと異なる基軸】新型アコード試乗 ホンダ・スポーティセダンの選んだ道は? 価格/ハイブリッドを評価

公開 : 2020.07.06 05:50  更新 : 2021.12.28 00:05

どんな感じ?

セダンの優位性はウェルバランスで最も活きる。

八方美人という言い方もできるが、実用性でも走行性能でも、相反する要件を高次元で両立してこそ「ザ・セダン」というわけである。

e:HEVは加速の反応に優れ、とくに「浅いアクセル開度での応答性がいい」と筆者。
e:HEVは加速の反応に優れ、とくに「浅いアクセル開度での応答性がいい」と筆者。    前田恵介

新型アコードで最も分かりやすいのがパワートレインだ。WLTC総合モードは22.8km/L。フィットの1.3L車が20km/L前後なのを考えれば、どれほど省燃費性に優れているか分かるはずだ。

もちろん、燃費スペシャル的な動力性能であれば興醒めでしかないが、上級大型セダンに相応しい性能をしてこの燃費性能なのだ。

e:HEVの加速性能は電動モーターに依存し、内燃機では得難い加速反応が売り物。ペダルに直結するようなコントロール感覚、とくに浅いアクセル開度での応答性がいい。

ただし、電動モーターの特性を生のままに引き出してはプレミアム・セダンらしくはならない。

乗り心地・ハンドリングの話

加減速で神経質あるいは粗野と感じさせないためには、過渡特性の面取りが重要になるが、多少ラフなコントロールをしても反応は滑らかである。

様々な特性をプログラムで生み出せる電動駆動の有利さを、余力と綺麗なドライブフィールに振り向けていた。

ドライブモードは「スポーツ」「ノーマル」「コンフォート」の3種。「スポーツ」ではハイブリッド/シャシーの特性、サウンドが変更される。
ドライブモードは「スポーツ」「ノーマル」「コンフォート」の3種。「スポーツ」ではハイブリッド/シャシーの特性、サウンドが変更される。    前田恵介

もっとも、急激な駆動力の立ち上がりなど、暴れん坊的なドライブフィールにスポーツ性を感じるドライバーもいると思われ、スポーツ・モードくらいはもう少し粗野でもいいかもしれない。

フットワークというか乗り味は、アコードらしさと快適性向上の両立にこだわったのが伝わってくる。

路面からの衝撃を抑えながら、挙動変化を少なく、ライントレース性を磨きながら切れ味や据わりをよく……、背反要素の両立点をいかに高めるか苦心したのが分かる。同時に走り全体の志向が纏まっていないような印象も受ける。

中立からの操舵初期応答は素早く、過剰なヨーの動きを抑えて旋回力を立ち上げる。タイトターンで大柄な車体を感じさせない回頭性を示しながら、高速コーナリングで据わりのいいハンドリングを示すのはアジャイル・ハンドリング・アシストの効果だろう。

定常円旋回中はそれなりのロールを示すものの、追い舵などでの極短時間の負荷増ではストロークを抑えて即応性を高める。これには、ストローク速度を制御するアダプティブ・ダンパー・システムが相当利いていると思われる。

操縦性と安定性の両面とも、かなり高い水準で纏められたハンドリングである。

“最新のホンダ感”には欠けるか

ただし、路面入力の少ない中立付近での滑らかさや、路面うねりでのしなやかさは今ひとつ。

比較的舗装状況のいい路面でも車軸まわりの細かな振動が気になる。高速での大きなうねり通過では大きなストロークを用いるが、それ以外ではコンフォート・モードでも比較的ストロークを抑えた設定。

後席の足元は広さが70mm増、ニースペースは50mmも拡大された。
後席の足元は広さが70mm増、ニースペースは50mmも拡大された。    前田恵介

硬いというほどではないが、体感するピッチやロールを少なく、車重を意識させない乗り味である。

快適性を向上させたことで先代アコードからの乗り換えユーザーに宗旨替えしたと誤解を受けないための乗り味なのだろう。

しかし、それが軸脚の所在を曖昧に感じさせ、CR-Vやフィットに感じたような新世代感に繋がっていない。

スポーツ/ノーマル/コンフォートの選択が可能なのだから、スポーツとコンフォートの乗り味で劇的な変化があれば、もっと違った印象になったと思われるのだが……。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

ホンダ アコードの人気画像