【想定内、それとも想定外?】ダイハツ・タント、フルモデルチェンジ1年目 Nボックスの背中が遠い? べつの見方も

公開 : 2020.08.01 05:50  更新 : 2021.10.11 13:38

ワゴンR→ムーヴ 軽のトレンド変化

タントが誕生したのは、2000年代前半。

この頃、軽市場はワゴンRやムーヴが軽の定番だった。これらは、トールワゴンと呼ばれた。

スズキ・ワゴンR(1993年)
スズキ・ワゴンR(1993年)    スズキ

そのワゴンRが生まれたのは、タントの10年前の90年代前半だ。

当時スズキのデザイン担当部署に所属していた人物に、後年になって話を聞いたが「ワゴンRは男性客を強く意識して企画した」という。

その背景にあるのが、ワゴンRが生まれる、14年前に登場したアルトの影響だ。

アルトは、軽自動車=商用車のイメージを刷新するため、当時女性の社会進出が進んできたことから、女性も気軽に乗れる低価格車として企画され大成功となる。

そうした女性ユーザー優先イメージを打破しようとしたのがワゴンRだった。

ワゴンRを追って登場したムーヴ。両車はモデルチェンジを進め成熟していく。

その中で、今度はダイハツがトレンドメーカーとなるべる打ち出した企画が、トールワゴンよりさらに車高が高く車内空間を一気に広げた、軽ミニバンのようなタントだった。

それでも、前出の年度別売上げでわかるように、2000年代後半までの軽の主流はあくまでもトールワゴン。

タントは、スズキがライバルとしてスズキが送り込んだパレットに比べて良く売れる、トールワゴンの派生車というイメージが残っていた。

そこに、Nボックスが登場する。

ホンダと違い、ダイハツは総力戦体制

2020年度1〜6月で、Nボックス(10万1454台)、スペーシア(6万5323台)、そしてタント(6万2253万台)という結果だ。

こうした状況について、軽自動車業界の一般論としては「ホンダはモデルラインナップが少なく、需要がNボックスに集中している」という指摘がある。

ホンダNボックス
ホンダNボックス

確かに、ホンダの乗用軽は、Nボックス、NワンNワゴンS660の4モデルのみ。2020年度1〜6月合計は13万7967台。Nボックスは乗用軽の73%を占める。

一方のダイハツは、ミラ、コペン、ムーヴ、タント、アトレー、ウェイク、キャスト、そして新加入のタフトを含めて8モデルとホンダの2倍。

2020年1~6月合計は、17万5649台で、このうちタントは35%にとどまる。

さらに、商用軽トラックでは、ダイハツがハイゼットでシェアトップを安定して維持。一方のホンダは、アクティの2021年モデル廃止が確定しているが、後継モデルについて具体的な計画は未発表である。

こうした、ダイハツの軽に対する総力戦体制のなかで、タントはしっかりと役目を果たしているといえる。

とはいえ、軽市場での中核であるスーパーハイトワゴンにおいて、Nボックスはタントにとってガチンコライバルであることは間違いない。

今後、タントの個性を生かした特別仕様車の登場や、マイナーチェンジに期待したい。

記事に関わった人々

  • 佐藤正勝

    Masakatsu Sato

    1964年生まれ。1984年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、八重洲PRセンターに入社。86年にF1/ルマン24時間を撮影後何かのスイッチが入ったらしく退社。フリーとなり国内外のレースを撮影。91年に撮影したDTMで、また何かのスイッチが入ったらしくどっぷりドイツ漬けに。現在は撮影のみならず、CS放送でのレース解説や雑誌への執筆も。

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