ハンドリングの安定感はレンジローバーが上

ロングストロークでアイドリング時はやや荒いエンジンは、回転の上昇とともに滑らかさを増す。トルクカーブはフラットで、回転数を引っ張らずとも、テンポ良く変速して速度を乗せていける。

トライアンフ2.5 PIは活発に走る。アクセルレスポンスはシャープと呼べ、低回転域から4000rpm目がけて、元気な唸り声を放つ。オーバードライブを備え、比較的静かに160km/hでも走れる。ロードノイズは驚くほど小さい。

レンジローバーなら、その速度域ではオプションのオーバードライブを備えていても、目一杯。しかしハンドリングの安定感は、オンロードでもトライアンフの上を行く。

車高が高い分、ボディロールは大きい。それに慣れてしまえば、四輪駆動が粘り強く路面を掴む。きついヘアピンを本気で立ち上がろうとすると、フロントタイヤからスモークが立つ。

パワーステアリングは感触に優れないものの、アシストが過度に大きいわけでもない。ブレーキは期待を裏切らない。トライアンフ2.5 PIも同様だ。

コーナリング性能は、トライアンフの方が数段良い。パワーステアリングからは感触が伝わってこないが、ハンドリングは良い。

トライアンフ以上に走るモデルは当時も存在したが、1960年代を起源とするクルマとして考えれば、良く走り、良く曲がる。慣れるほどに、トライアンフ2.5 PIの安全な操舵感に信頼感が湧いていく。ウェット路面なら、楽しいかもしれない。

希望に満ちたオリジナルモデル

ブリティッシュ・レイランドが1970年の始まりと同時に生み出した、当時としては風変わりな2台。資金力のあるユーザーへ向けた、ライフスタイルを提案するモデルだった。現実的すぎず、誇張しすぎない。適度なステータスを与えた。

中産階級に好まれたトライアンフ製のハンサムなエステートは、少しの間、セグメントをリードした。MkIIへと進化したトライアンフ2.5 PIは、そのピークにあった。

レンジローバーは、トライアンフ製エステートとは違う存在として登場した。選ばれし人の四輪駆動モデルという、新カテゴリーが生まれた瞬間だった。

トライアンフ2.5 PIエステートと、初代レンジローバーの登場から50年余り。英国と世界の自動車産業がどのような変化を迎えるのか、当時推測することは難しかっただろう。しかし、希望に満ちたオリジナルモデルが、英国で誕生していたことは事実だった。

レンジローバーとトライアンフ2.5のスペック

ランドローバー・レンジローバー（初代 3.5L／1970年〜1988年）のスペック

価格：新車時　1998ポンド／現在　3万ポンド（405円）以下
生産台数：9万6331台（1981年まで）
全長：4470mm
全幅：1778mm
全高：1778mm
最高速度：152km/h
0-96km/h加速：13.9秒
燃費：5.0km/L
CO2排出量：−
乾燥重量：1724kg
パワートレイン：V型8気筒3528cc自然吸気
使用燃料：ガソリン
最高出力：136ps/4750rpm
最大トルク：28.2kg-m/3000rpm
ギアボックス：4速マニュアル

トライアンフ2.5 PIエステート（MkII／1969年〜1975年）のスペック

価格：新車時　1869ポンド／現在　1万ポンド（135円）以下
生産台数：4102台
全長：4629mm
全幅：1651mm
全高：1422mm
最高速度：177km/h
0-96km/h加速：9.2秒
燃費：7.8km/L
CO2排出量：−
乾燥重量：1225kg
パワートレイン：直列6気筒2498cc自然吸気
使用燃料：ガソリン
最高出力：133ps/5450rpm
最大トルク：21.1kg-m/2000rpm
ギアボックス：4速マニュアル

画像　レンジローバーとトライアンフ2.5　全75枚