【数奇なフランス・グランプリ】デューセンバーグに破れたバッロ 3/8 LC 後編

公開 : 2020.09.06 16:50  更新 : 2020.12.08 08:34

一時はフランス人ドライバーがリード

フランス人ドライバー、シャサーニュが一時はレースをリードし、観衆を大いに湧かせた。一方でアメリカ人のデ・パルマがドライブするバッロは、キャブレターの不具合で失速。6位に順位を落とし、5分の差が付けられていた。

レース中盤になると、フランス人の希望は、シャサーニュのバッロに絞られた。19秒から30秒程度の差で、デューセンバーグのボイヤーが激しく追い上げる。

バッロ 3/8 LC(1921年)
バッロ 3/8 LC(1921年)

ところが18周目、レースをリードしていたバッロからガソリンが漏れ、シャサーニュは失速してしまう。コース全体に、落胆の声が広がっただろう。

荒れた道を高速走行した振動で、燃料タンクのマウントが破損。ドライブシャフトにタンクが落ち、ガソリンが勢いよく流れていた。

同じくして、デューセンバーグのジョー・ボイヤーもエンジン・トラブルでストップ。残り12周となったところで、デューセンバーグのジミー・マーフィーがトップを奪還した。

希望の光を残していたバッロは、デ・パルマの1台のみ。トップを走るデューセンバーグの8分差で周回していた。

アルバート・ギヨのデューセンバーグは、タイヤの不具合でつまづく。タイヤの破片がライディング・メカニックに当たり、ピット・イン。別のスタッフがゴーグルも付けずにマシンに乗り、レースを再開した。

過酷な状況のレースにも関わらず、3分の2の距離を重ねた時点で、まだ10台がコース上に残っていた。ピットは修理やタイヤ交換で混乱し、トラブル続きだった。

フランスでのアメリカ・チームの優勝

フランス・グランプリの後半をリードしていたは、間違いなくアメリカのチーム。マーフィーがドライブするデューセンバーグに、チームメイトのギヨが続いた。バッロは3位だったが、14分以上の差が付いていた。

誰もが諦めかけた残り2周。マーフィーは、タイヤがパンクしピットイン。ラジエターには岩が当たり、冷却液が漏れていた。

バッロ 3/8 LC(1921年)
バッロ 3/8 LC(1921年)

デューセンバーグは、スペアタイヤを積んでいなかった。コース上でのタイヤ交換は危険で、軽量化にもつながるという判断だった。

デ・パルマは最速タイムで追い上げていたが、時遅し。マーフィーはオーバーヒートしかけるデューセンバーグを、前周から3分も遅いタイムでゴールさせた。

デ・パルマは2位に入るが、15分遅れでのフラッグ。2.0L 4気筒エンジンを搭載したジュール・グーがドライブしたバッロが、3位でフィニッシュしている。

フランス・チームの結果に、観衆は落胆。優勝したアメリカ人のマーフィーは、祝福されなかった。

デ・パルマの見事な走りに、関心を示す人もほとんどいなかった。国歌は演奏されず、話題となったのは3位に入賞した、フランス人のジュール・グーだけだったようだ。

アメリカ・チームの優勝が伝えられる中で、バッロ・チームを率いるアーネスト・バッロはスポーツマンシップに欠けていた。彼はお立ち台に登ると、サーキットの中央広場で叫んだ。

「もう一度、レースをやりましょう。誰が勝者なのか、分かるはずです」。アーネストは観衆へ、さらに30周走る準備ができていると訴えた。

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