【似たクルマでもこんなに違う】ダイハツ・タフトVSスズキ・ハスラーの長所/短所 正反対の販売戦略

公開 : 2020.10.14 12:28  更新 : 2021.10.22 10:14

タフトは基本性能向上でアピール

タフトの後席には前後スライドの機能が備わり、背もたれを前側に倒すと座面も下がる。床が平らで広い荷室にアレンジできる。

しかもスライドと座面の昇降機能は左右独立式だから、全高が1700mm以下の軽自動車では、ワゴンRと並んでシートアレンジが最も充実している。

またハスラーは全車にマイルドハイブリッドを搭載するので、WLTCモード燃費(2WD)は、ノーマルエンジンが25km/L、ターボは22.6km/Lだ。

タフトの20.5km/L・20.2km/Lに比べて、優れた燃費数値を達成した。

その代わりタフトに比べると、装備の充実度は低い。価格が最も安いハイブリッドG(136万5100円)は、ヘッドランプがハロゲンで、電動パーキングブレーキも採用されない。

そしてタフトが装備の充実度、ハスラーは基本性能を高めた背景には、ダイハツスズキの販売戦略の違いがある。

ダイハツ、スズキよりも車種が多い利点

ダイハツは前輪駆動の軽乗用車を9車種そろえる。対するスズキは5車種で、後輪駆動のジムニーを加えても6車種だ。

ダイハツは選択肢が多く、全高を1600mm以上に高めた車種だけでも、ムーヴ、ムーヴキャンバス、タフト、キャスト、タント、ウェイクをそろえる。

この内、キャストとウェイクの販売は低調だが、ムーヴ、ムーヴキャンバス、タント、タフトはダイハツの基幹車種だ。

そうなるとタフトが後席の居住性を向上させると、全高がほぼ同じムーヴやムーヴキャンバスと機能が重複してしまう。

そこでタフトの後席は、2名乗車時に畳んで使う荷室と割り切った。

車内の色彩も前席はブラック、後席はグレーに区分され、ドアハンドルのメッキ(GとGターボ)も前席のみに備わる。

タフトのカタログを見ても、後席に乗員が座っている写真はなく、畳んで荷物を積んでいるカットが多い。

いわばクーペ的な使い方を想定して、後席をシンプルに仕上げ、スカイフィールトップなどの装備にコストを費やした。

スズキの場合は、ハスラーと全高が同等の軽自動車は、実用重視のワゴンRだけだ。

そこでハスラーも、ファミリーユーザーまで視野に入れて開発された。居住空間、荷室の広さ、シートアレンジなどの基本機能はワゴンRと共通化されている。ワゴンRのSUV仕様がハスラーと考えても良いだろう。

この商品特徴の違いを考えると、タフトよりハスラーが多く売れるのも納得できる。ハスラーは多くのユーザーを対象に開発されたからだ。

そしてこれから年末に向けて、タフトとハスラーは、ますますオトクに買えるようになるだろう。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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