【詳細データテスト】ホンダ・ジャズ(フィット) 抜きんでた広さの車内 燃費/洗練性に優れたドライブトレイン クルマ好きには訴えかけず

公開 : 2020.10.17 11:50  更新 : 2020.10.17 12:02

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

日本でのフィットは、若い年齢層から大きな支持を得ている。しかし欧州、とくに英国で、ジャズはそのイメージに問題を抱え続けてきた。

コンパクトカー兼MPV的なフォルムが、若年層やルックスを重視するユーザーの賛同を得られなかったのである。むしろ、定年後に庭いじりの道具や植木を積むのに便利で買うクルマ、という印象が浸透しているのだ。

エンジンの上に吸気系を重ねてレイアウトすることで、エンジンルーム内のスペース効率を向上。ハイブリッドシステムや補機用バッテリーを集約し、室内空間を可能な限り広げた。
エンジンの上に吸気系を重ねてレイアウトすることで、エンジンルーム内のスペース効率を向上。ハイブリッドシステムや補機用バッテリーを集約し、室内空間を可能な限り広げた。    JOHN BRADSHAW

そんな流れで新型に目を向けると、ホンダはそうした冴えないイメージをついに受け入れたのかと戸惑うのではないだろうか。そのエクステリアは、派手目だった先代ではなく、比較的プレーンな先々代に近いものとなった。

パネル表面の処理はクリーンでシンプル。グリル周りも凝った造形はみられない。全体的に要素を削ぎ落とそうとしたようで、目を引くものも少ない。どうやらホンダが新たなデザイン哲学に掲げる「用の美」を体現しているようだ。民藝運動から生まれたこの言葉は、日々使われる道具の飾らない美しさを指している。

ヤリスやクリオのようなヴィジュアル面のパンチはない。だが、ジャズはおもしろみがないかというと、ほとんどのテスターがそれは正しい評価ではないという。どちらかといえばハンサムなほうで、ただし、路上で誰もが振り返るようなクルマではないといったところだ。

機能優先のデザインという点では、これまでどおりよくできている。パッケージングの観点では、まさにエンジニアリングの見本のようだ。燃料タンクを前席下に配置したことで、後席のスペースを最大化するとともに、座面の沈み込みや跳ね上げで積載空間を拡大するマジックシート採用が可能になった。

とにかく、スペース効率を徹底的に追求したのが、新型ジャズの特長だ。エンジンルームでは、4気筒ユニットの吸気系をエンジン上部に配置。ハイブリッドシステムを構成する、駆動用モーターやスターター/ジェネレーターの搭載スペースを稼いでいる。補機類用の12Vバッテリーもフロントに積むので、積載スペースを侵害しない。

ハイブリッドシステムの総合出力は108psで、斬新な固定ギアの電気式CVTを介して前輪を駆動。いっぽうでモーター/ジェネレーターは、荷室フロア下の駆動用リチウムイオンバッテリーから電力供給を受け、エンジンとの協調時には25.9kg-mの最大トルクを発生する。

プラットフォームは、東南アジア向けの小型セダンであるシティと共通。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームという、このクラスの典型的なセットアップだ。

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