【不発のカブリオレ】ブリストル405とラゴンダ3リッター ドロップヘッド・クーペ 後編

公開 : 2020.11.01 16:50  更新 : 2020.12.08 08:40

スポーツカー用エンジンを搭載した2台

130km/h前後で3速に入れて流すのが、ブリストル405で心地良い領域。4速のオーバードライブは、自動的に解除されるスピードだ。パーソナルなスポーツカーとして、積極的に運転したくなる。

450kgも多い車重で、ブリストルより35ps多いラゴンダの馬力は食われてしまう。積極的に変速すれば、活発さが顔を見せ始める。ラゴンダの方が、低速域での柔軟性は高い。

ラゴンダ3リッター・ドロップヘッド・クーペ/ブリストル405ドロップヘッド・クーペ
ラゴンダ3リッター・ドロップヘッド・クーペ/ブリストル405ドロップヘッド・クーペ

ブリストルの印象的なほど甘美なシフトタッチと比べれば劣るが、ラゴンダの変速も雑用には感じられない。ラゴンダにも長所や特長は沢山ある。

この1954年製のラゴンダ3リッターは、新車時はコラムシフトだった。今はフロアからレバーが伸びている。ストロークはブリストルより長く、変速が容易になるシンクロメッシュは付いていない。

今回のブリストル405もラゴンダ3リッターも、スポーツカー用エンジンを搭載したカブリオレ。そのポテンシャルを引き出すには、第一印象よりずっと激しく回す必要がある。

実際、ラゴンダの直列6気筒ユニットは、ブリストルよりはるかに高回転域まで吹け上がり、スムーズ。サウンドも現代的なもの。ラグジュアリーなドロップヘッドであることを考えれば、うるさすぎるけれど。

デイビッド・ブラウンが抱いたラゴンダの夢を、ビンテージカーとして共有できる人は少なかった。クルマの価値を高く認める筆者でも、短所は否定できない。

ラゴンダを選びたくなる現在の価格差

ラゴンダ3リッターのサルーンは、ショーファー・ドリブンにするには、リアシートが狭い。反面、パワーステアリングやATはなく、自分で運転するのは簡単ではなかった。

1956年のモーターショーで、デイビッド・ブラウンはラゴンダ3リッターの価格を大幅に引き下げる。販売の難しさを象徴する決定だった。

ブリストル405ドロップヘッド・クーペ(1954年〜1958年)
ブリストル405ドロップヘッド・クーペ(1954年〜1958年)

MkIIとしてフロアシフトを獲得し、1958年まで生産は続いた。しかしラゴンダの感心が高まることはなく、次期モデルの計画もないまま、静かに3リッターは途絶えた。ラゴンダ・ブランドを見捨てたわけではなかったが、新しいDB4の開発に資金が投じられた。

ラゴンダ2.6リッターはモデル通算510台が製造された。3リッターはわずかに270台だった。

ラゴンダ3リッターは、戦前との血縁を持つ本物のラゴンダ。その後は、アストン マーティンへと吸収されていく。そう考えれば、ドロップヘッド・クーペの現在の価格、8万9000ポンド(1201万円)も決して高くはないだろう。

一方のブリストル405ドロップヘッド・クーペは、誰の目にも美しい。運転も素晴らしく楽しめる。それだけに現在の販売価格は18万5000ポンド(2497万円)なり。

筆者がクラシックな4シーターの英国製コンバーチブルを探しているなら、10万ポンド(1450万円)近い価格差は、かなり魅力的に映る。多少の弱点があったとしても、思わずラゴンダ3リッターの方をガレージに連れて帰りそうだ。

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