【765 LTとアトム4の二車択一】GRヤリスも善戦 2020年の英国ドライバー・ベストが決定 BBDC 2020(7)

公開 : 2021.01.06 05:45  更新 : 2021.05.18 16:14

2020年で一番運転が楽しいクルマを決める、英国ベスト・ドライバーズカー選手権(BBDC)。今回は最高得点でアリエル・アトム4とマクラーレン765 LTの2台が並びました。果たして、2020年のベストは・・。

英国ベスト・ドライバーズカー選手権(BBDC)2020:アリエル・アトム4

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)/Max Edleston(マックス・エドレストン)/Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

  
2020年の英国ベスト・ドライバーズカーに選ばれたのは、アリエル・アトム4。2019年の勝者は、極めて僅差で2020年でも頂点を掴んだ。

5名の審査委員がサーキットと一般道で25点づつ、50点満点で採点する。そんないつものプロセスで、2台が219点で並んだ。配点内容を再確認し、トップの座を射止めたのはアトム4だった。

アリエル・アトム4(英国仕様)
アリエル・アトム4(英国仕様)

審査員の評価を見ていこう。アンドリュー・フランケルは、「このクルマは誇張抜きで賞賛に値します。アリエル・アトム4の操縦性の高さは、過去32年間のBBDCで最も見事な1例といっていいでしょう」。と称える。

ボディと呼べる部分もヒーターもないアトム4は、英国の10月下旬の気候と相性が悪いと考えていた。でも実際は違った。マット・ソーンダースも認める。「軽さが、ノミネート車両の中で強い輝きを放ちました」

ダンパーはしなやかで、調整する手間も不要。アトム4は天候を問わず扱いやすい。路面の隆起を滑らかにいなし、クルマと対話するように運転できる。予想以上の落ち着きを備え、動的性能の高さを引き出せる。

速度を問わず、運転に没入するような体験を味わえる。サーキットに出れば、息を呑むほどの素直さで、驚異的なコーナリングスピードを見せつける。

ジェームス・ディスデイルが上手にまとめてくれた。「すべてがアナログ体験、という事実に感服です。ドライバーの操作に対し、見事なまでに反応が正確。公道では、速度域を問わずスリリングです」

筆者も同感。アリエル・アトム4をノミネート車両の中で際立たせている、最大の特徴だと思う。

お手頃ドライバーズカー(ベスト・アフォーダブル)2020:トヨタGRヤリス

正直にいって、今年のBBDCで一番驚いたのがトヨタGRヤリス。濡れたエクスムーア国立公園やカースル・クーム・サーキットで、全員が歓喜し、興奮し、夢中になった。素晴らしいクルマが突然に出現した印象だ。

小さなトヨタは、天候や路面状態を問わない高速モデルとして、並外れた実力を披露。小さく反応に優れ、扱いやすい。

トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)

しなやかで安定し、ヒタヒタと路面を掴み続ける確かなトラクションは、不意の路面の乱れや状況にも充分に対応する余力を与えている。雨や大きな水たまりに、うろたえる必要はない。水を得た魚のようですらある。

英国も日本も、雨の多い気候の島国だ。でもアスファルトを走っている限り、四輪駆動のメリットはさほど大きくはない。しかし、2020年に最も期待されていたフォルクスワーゲン製のホットハッチですら、GRヤリスに届くことはなかった。

多くの高性能モデルがローンチコントロールと、ミシュランのカップタイヤで武装し、ニュルブルクリンクのタイムを刻みたいと考えている。本当にわれわれが楽しいと感じる領域を、忘れたかのように。

一般道をすばしっこく走れるクルマが、どれほど素晴らしい感覚を与えてくれるのか、いかに惹き込まれる存在なのか。それをタイムリーに痛感させてくれたクルマこそ、トヨタGRヤリスだ。

ほかのメーカーは、トヨタの新たな一手に応えることができるだろうか。手頃な高性能モデルとして、当面はGRヤリスが台風の目になることは確実だ。

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