【63より、ベンツより】メルセデスAMG 43の「GLCクーペ」 1000万円級SUVに求めるものは?

公開 : 2021.01.06 20:25  更新 : 2021.12.27 23:47

足さばきも模範生

加減速Gや横Gの変動を、ストロークを使って穏やかに往なしてしまう。

ストローク量そのものは少ないのだが、動き出しから収束までの繋がりがいい。減衰力が滑らかに立ち上がりストロークとともに強くなるようなストローク感で、当然揺れ返しも抑えられている。

試乗では高速道路の走行もテスト。回転を高めていっても紳士的で上質。
試乗では高速道路の走行もテスト。回転を高めていっても紳士的で上質。    前田恵介

加わるGが大きくなるほど減衰の利きもよくなり、低負荷ではしなやかに、高負荷では強靱に制御され、負荷変化に対してストローク量の変動も少ない。

電子制御エアサスがあればこそだが、ここまで使いこなしているクルマはそうそうない。

このフットワークは、ハンドリングには下り勾配の高速コーナリングやコーナリング中の急制動などのコントロールを失いやすい状況でも、操舵に素直なラインコントロール性を実現。

小気味よさとか軽快感には欠くものの、圧倒的な信頼感を与えてくれる。

乗り心地では時として段差乗り越えで車軸まわりの振動を感じるが、角のある当たりはなく、20インチの(前)255/(後)285を履くにしては滑らかである。

走行モードでスポーツ+を選択すると低中速で硬さを意識させられるが、速度域が高くなるとコンフォートモードとの差は少なくなる。スポーツ+の乗り心地も意外と実用的である。

「買い」か?

AMG GLC 43 4マティック・クーペの日本導入は2017年。2019年10月にはMCが施され安全&運転支援機能のアップデートや「ハイ、メルセデス」でお馴染みの会話型ボイスコマンドを採用したMBUXが採用された。

デビューは4年前でも最新のMB車と変わらぬ安全&運転支援機能や車載ITを備え、良質な高性能共々カテゴリーをリードする実力なのは間違いない。

メルセデスAMG GLC 43 4マティック・クーペ(イリジウムシルバー)
メルセデスAMG GLC 43 4マティック・クーペ(イリジウムシルバー)    前田恵介

1006万円の車両本体価格では流石に買い得とは言えないが、GLCクーペのエントリーに位置するディーゼル搭載の「220 d 4マティック」の266万円高ならば投資効果はかなりのもの。

動力性能の質も量も大幅アップのパワートレイン、AMG専用電子制御エアサスやブレーキシステム、内装の設えもグレードアップ。

しかも、カタログスペックには表れない走りの質感の差もある。

AMGにはクルマ好きのための魅力を高めたブランドの印象もあるが、どちらかと言えばマニア限定とするには優等生すぎる。

ブランドへの信頼と安心からMB車を選択するユーザーも少なくないだろうが、その期待も裏切らない。

1000万円級のツーリング志向のSUVとしては中身の濃いモデルだ。

AMG GLC 43 4マティック・クーペ スペック

メルセデスAMG GLC 43 4マティック・クーペ

価格:1006万円(2021年1月~)
全長:4740mm
全幅:1930mm
全高:1590mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:9.6km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:1920kg
パワートレイン:V型6気筒2996ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:390ps/6100rpm
最大トルク:53.0kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック
乗車定員:5名

AMG GLC 43 4マティック・クーペのトランク。
AMG GLC 43 4マティック・クーペのトランク。    前田恵介

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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