【誕生から60年】ジャガーEタイプ シリーズ1とシリーズ3を比較 3.8L直6x5.3L V12 後編

公開 : 2021.01.23 18:25  更新 : 2022.08.08 07:34

スポーツカーらしくはないシリーズ3

現代のV型12気筒を積んだエキゾチック・モデルと異なり、シリーズ3のEタイプは、離れたところからサウンドで接近を知らせることはない。マフラーからは、穏やかなハミングが放たれるだけ。回転数を高めなければ。

18km/h程度の速度で、4速に入れたままでも走れる。回転数は500rpmくらいだ。

ジャガーEタイプ・シリーズ3 V12(1971〜1974年)
ジャガーEタイプ・シリーズ3 V12(1971〜1974年)

エンジンの負荷が増えても、外に頑張りを主張することはない。カムからの悲鳴もほぼなく、吸気音も静かななまま。112km/hでのクルージングは3200rpm、128km/hでも3700rpm程度で済む。

基本的に、走り始めたら4速に入れっぱなしでも大丈夫。トランスミッションの温度が上がるとシフトタッチが悪くなるから、丁度いい。

シリーズ3がシリーズ1に着いて行けなくなるのは、コーナーが連続するワインディングくらい。ステアリングは低速域で感触に欠け、パワーステアリングからノイズも聞こえてくる。速度域が上がると手応えは増すものの、1961年式のような情報量は得られない。

直列6気筒を積むシリーズ1のEタイプは1202kgと軽量だが、シリーズ3は1505kgもある。コーナリングでは、余分な重量を隠しきれない。ただし、V型12気筒エンジンは初期のXKユニットより65kgしか重くない。

前後のトレッド幅はシリーズ1より広く、XJ6サルーン譲りのサブフレームでバルクヘッドが強化されている。アンダーステアを手懐けることは可能なものの、スポーツカーらしくはない。活発に走ることは、得意分野とはいえないだろう。

Eタイプという衰えない価値

大陸を高速巡航できるように、ブレーキ性能も高めてある。フロントはベンチレーテッド・ディスクで、リア側はソリッドディスクだが冷却ダクトが付いている。それでも、ドライバーとの一体感は濃くない。

シリーズ3の乗り心地は印象的に良く、舗装の乱れを吸収し、穏やかにやり過ごしてくれる。ロードホールディング性にも優れ、乗り心地と操縦性との優れたバランスにある。

ジャガーEタイプ・シリーズ1 3.8とジャガーEタイプ・シリーズ3 V12
ジャガーEタイプ・シリーズ1 3.8とジャガーEタイプ・シリーズ3 V12

北米市場を意識していたEタイプだから、英国の郊外を飛ばすことは意図した走りではなかった。シリーズ1と比べてどう、というより、まったく別の野性味がある。

かといって、シリーズ1の方が大人しいわけではない。純粋なEタイプとして優れている。当時のロード&トラック誌が、こう残している。「試乗レポートの3行目から、こんなまとめ方をするのは異例。Eタイプはわれわれの期待に応えただけでなく、大幅に上回っています」

オリジナルのジャガーEタイプは、クルマとして表現できうる以上の存在だといっていい。文化としての基準を築いた、試金石だ。古くから親しみのある英国人にとって、その価値が衰えることはないだろう。

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