【5.0L V8のSLCでラリー】メルセデス・ベンツ450 SLC 5.0 隠れたホモロゲーション・スペシャル 前編

公開 : 2021.03.27 07:05

かつてメルセデス・ベンツが生み出したラリー・ホモロゲーションは、4シーターのSLCがベース。エンジンは5.0LのV8でした。英国編集部が、その過去を振り返ります。

SLの4シーター、SLCのライトウェイト仕様

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
クラシックカー好きに限らず、ラリーやレース用のホモロゲーション・スペシャルの人気は高い。ベース車と似た見た目ながら速く珍しく、放つ魅力は強い。多くはFIA(国際自動車連盟)の規定を満たすため、特定のレースに合わせて少数が生み出される。

最低でも500台や1000台という一定量の製造・販売を条件とすることで、ワークスカーをショールームに並ぶモデルと近い状態に留めておく目的もある。思い浮かべやすい例といえば、BMW 3.0 CSLではないだろうか。

メルセデス・ベンツ450 SLC 5.0(1977-1980年)
メルセデス・ベンツ450 SLC 5.0(1977-1980年)

一般ドライバー向けに販売された3.0 CSLは、グループ2を戦ったレーシングマシンに手直しを加えたもの。当時は必要な台数を売りさばくことは簡単ではなかったが、BMWのイメージを築いたモデルとして今でも注目度の高い傑作といえる。

BMW 3.0 CSLは、AUTOCARでも何度か取り上げているから、ご存知の方も多いと思う。では、メルセデス・ベンツ450 SLC 5.0はいかがだろう。モデル後期では、500 SLCへ進化したクーペだ。

グランドツアラーとして定評のあったSLの4シーター仕様、SLCに軽量バージョンが存在していた。当時のAMGが手掛けたグループ4に属するマシンで、1980年の欧州ツーリングカー選手権で1度の優勝を獲得している。

だがそれ以上に、SLCはラリーで活躍した。ボディは重く、作りは豪華。ラリーには似つかわしくない。ところが大排気量のV8エンジンを載せたクーペは、ラリーイベントで効果的な走りを披露している。クルマと相性の良いコースに限って。

アルミ製のボディとエンジンを獲得

1977年に開催された、英国からオーストラリアを目指すラリー、ロンドン・シドニー・マラソンへメルセデス・ベンツは280 Eで参戦。1・2フィニッシュを成し遂げ、モータースポーツが生み出すパブリシティ効果の可能性を実感する。

しかし軽量・コンパクトで、パワーウエイトレシオに勝るフィアットフォードに勝ち続けるには、W123型の280 Eでは役不足。さらにパワフルなマシンが必要だった。

メルセデス・ベンツ450 SLC 5.0(1977-1980年)
メルセデス・ベンツ450 SLC 5.0(1977-1980年)

そこで矢面に立ったのが、SLC。全長4740mmもある、SLがベースの4シーター・クーペだ。ボディは補強され剛性を高め、長いホイールベースで安定性にも優れていた。

車重を削るため、ストレスのかからないパネル部分はアルミニウムに置き換えられた。450 SLC 5.0では、約56kgをダイエットしたという。ちなみに2シーターのSLでは軽量化を目的に、後にモデル全体のボンネットがアルミ製になっている。

また450 SLC 5.0は、オールアルミ製のM117型V8エンジンを一足先に獲得する。税制上4990ccとうたわれていたが、実際の排気量は5025cc。鋳鉄製ブロックのエンジンを積むSLC 450より20psが増強され、243psを得ていた。

新しいエンジンに関するデータ取得として、ラリーは理想的な方法でもあった。M117型はスチール製のシリンダーライナーが省略され、金属ナトリウム封入バルブを採用し、排気ポートの面積は11%も大きい。

リアアスクル・レシオは12.5%高められ、市販版450 SLC 5.0の最高速度は225km/hとされた。メルセデス・ベンツのコンペティション部門が用意した参戦用の14台は、市販モデルに驚くほど内容が近かった。

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