ミニ・クーパー

公開 : 2014.01.31 20:50  更新 : 2017.05.29 19:15

■どんなクルマ?

すでに2014年のカー・オブ・ザ・イヤーの最有力候補と目されているクルマがミニ・クーパーだ。この3ドア・ハッチバックの初めて試乗する機会を得た。これは昨年11月にこの3代目ミニが発表されて以来、待ちに待った瞬間だった。

確かに、オプションのスポーツ・シートに腰を下ろしただけでは、新しいクーパーが如何に進歩したかは解らない。センスの良いマルチファンクション・ステアリング・ホイールを前にしても同様だ。確かに、インテリア・クオリティの向上は理解できるのだが。

4つ用意されるエンジンはすべて一新されたが、中でもこのクーパーに搭載されるのは1.5ℓ3気筒ターボだ。このエンジンは、スペック・シートの上では決してわからないパフォーマンスとユーザビリティを持っている。そのパワーは134bhp/4500rpm、トルクは22.4kg-m/1250rpmだ。

ちなみに、このクーパー以外のミニのラインナップには、94bhpの1.5ℓ3気筒ディーゼルと、クーパーS用の189bhpを発揮する2.0ℓ4気筒も用意される。クーパーS用の2ℓユニットは、今回のフルモデルチェンジで唯一排気量のあがったエンジンである。

■どんな感じ?

クーパーの新しい3気筒ユニットは、スタート時は少々騒がしい。エンジンとエグゾーストから深く単調なサウンドを奏でる。特に、それはセンター・コンソールにあるトグル・スイッチの下あたりから反響する。しかし、少しでも回転をあげると、その耳障りなサウンドは消えてしまう。

とにかくレスポンスの良いエンジンというのが第一印象だ。1000rpmからカットオフの効く6400rpmまで活発に回る。アイドリング時から回転を上げる時に若干のターボ・ラグを感じるが、それ以外のフレキシビリティとレスポンスの良さは、以前の4気筒エンジンが信じられないぐらい古臭く感じるほど。とにかく面白く、並外れたパワーバンドを持つ。高いギアでのグルージングでもリラックスしたドライビングが味わえるのと同時に、どこからでも堅実な加速が得られるのだ。

また、新しい6速マニュアルのトランスミッションも、短い動作でシフトが可能で、しかも前作よりもよりポジティブなフィーリングがある。また、ダウンシフトをスムーズにする自動的に回転を合わせる仕組みも付けられている。

ボディは前モデルよりも10kg軽量化が計られ1085kgとなった。パワー・ウエイト・レシオが向上したため、パフォーマンスも0-100km/h加速がマニュアル・ギアボックスで9.1秒から7.9秒へ、オートマティック・トランスミッションの場合は7.8秒へと向上している。その一方で、燃費は22.2km/ℓ、CO2排出量は105g/kmと17%も改善されているのだ。

この新しいエンジンの改良点のひとつに、あらゆる回転域で静かでリラックスしたドライブが可能ということが挙げられる。改善されたエアロダイナミックスと合わせて、ハイウェイ・クルージングでも非常に静かだ。

新しい高張力スティールのプラットフォームはUKLと呼ばれるもの。乗り心地の改善と、よりシャープなレスポンスをもたらすために、ミニはフロントにマクファーソン・ストラット、リアにマルチ・リンクというレイアウトとなり、トレッドも広くなった。

そのスタリングは前モデルのイメージを引き継いではいる。ヘキサゴン・グリル、丸いヘッドランプ、クラムシェル・ボンネット、直立したウインド・スクリーン、フローティング・ルーフ、連続したクロームで覆われるガラスハウスなど、すべてのデザイン・ファクターはそのままだ。また、シンプルなボディ・ラインも引き継がれている。しかし、その表面はより引き締まっている。また、マッシブなホイールアーチや、ヘッドランプやテールランプのLEDグラフィックスは進化した部分といえるだろう。

ただし、ますます厳しくなってきた衝突安全基準に対応させるためもあって、ボディはひとまわり大きくなっている。全長3821mm、全幅1727mm、全高1415mmと、前モデルよりも98mm長く、44mm広く、7mm高くなっている。また、ホイールベースは28mm長くなった2495mmだ。

インテリアは今までどおりレトロなスタイル・テーマが貫かれている。しかし、新しい素材と、高価なオプションなどで大いに改善されている。また、シートは前モデルよりもやや低めにセットされているが、大きくなったドアは乗降を容易にすることに役だっているようだ。ステアリングとフロント・シートの調整幅は大きく、誰でもが快適なドライビング・ポジションをとることができる。ちなみに、トランク・スペースは211ℓに増大されている。

この3代目のミニもスポーツ、ミッド、グリーンの3段階に調整可能な電子制御のダンパーを持つ。オプションのドライバー・エクスペリエンス・ファンクションを装備すれば、ステアリングとスロットルのレスポンスも変更可能だ。

プエルトリコの路上でのテストとなったが、クーパーがより繊細でバランスがとれたクルマで、スムーズな乗り心地と、エンターテイメントなドライビング・フィールを持っているということは直ぐに理解できた。街中ではそのしなやかなダンピングの効いたサスペンションと、活発な動力性が嬉しい。それでいて、高速域でのハンドリングもきちんとしている。

リア・サスペンションの変化は、安定したコーナリングを提供してくれる。グリップ・レベルも印象的で、多くのコーナーを安定した姿勢でアンダーステアもなくクリアしていく。また低い重心と、前後に取り付けられた中空アンチロールバーのおかげもあって、ボディ・コントロールも素晴らしいものがあった。

また、ステアリングは大きな進歩だ。キックバックは少なく、セルフ・センターリング・トルクも少なめだったが、路面の状況を的確に伝えてくれる軽いものだった。

■「買い」か?

この3代目ミニは、前モデルのオーナーにも気に入られることができるだろうか。答えは明確だ。パフォーマンスとハンドリングが上がり、乗り心地も改善され、しかも日常的なユーザビリティも備えている。街中でもオープン・ロードでも、以前にも増して本当のエンターティナーと言えるクルマに仕上がっているのだ。

(グレッグ・ケーブル)

ミニ・クーパー

価格 £12,300(258万円)
最高速度 210km/h
0-100km/h加速 7.9秒
燃費 22.2km/ℓ
CO2排出量 105g/km
乾燥重量 1085kg
エンジン 直列3気筒1499ccターボ
最高出力 134ps/4500rpm
最大トルク 22.4kg-m/1250rpm
ギアボックス 6速マニュアル

▶ 初試乗 / ミニ・クーパーS

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