BMWに並んだ英ブランド トライアンフ:1300からドロマイト・スプリントへ紆余曲折(1)

公開 : 2025.11.23 17:45

BMWに並ぶメーカーだったトライアンフ ミケロッティの美ボディをまとう1300 トレドと1500へ分離進化 お手頃でも上質な内装 128psを発揮したスプリント UK編集部がサルーン4種をご紹介

BMWに並ぶメーカーだったトライアンフ

1965年にトライアンフ・ディーラーを訪れて、あと20年でホンダのOEMモデルだけになると告げたら、確実に驚かれたはず。半世紀前の英国では、BMWやランチアに並ぶ優れたイメージを擁し、先進的な前輪駆動モデルも提供するメーカーだった。

今回ご紹介するトライアンフ1300は、それを代表したモデル。複数のパワートレインが用意され、ボディは2種類が選べ、数多くのバリエーションが生み出された。傑作ヘラルドの後継として、確かな人気を得ていた。

手前からアイボリーのトライアンフ・ドロマイト・スプリントと、ライト・ブルーのトライアンフ1500、ダーク・グリーンのトライアンフ1300、ハニーサックル・イエローのトライアンフ・トレド
手前からアイボリーのトライアンフ・ドロマイト・スプリントと、ライト・ブルーのトライアンフ1500、ダーク・グリーンのトライアンフ1300、ハニーサックル・イエローのトライアンフ・トレド    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1962年、当時のスタンダード・トライアンフ社は、新モデル「アヤックス」の開発へ着手。ところが、2年後にヘラルドの生産継続が決定され、設計は変更を余儀なくされた。

後に1300と名付けられる新しいトライアンフの4ドアサルーンは、小さな2ドアのヘラルドと、ミドルサイズ・サルーンの2000の間を埋める役目を負った。同社の技術ディレクター、ハリー・ウェブスター氏は、以前から考えていた前輪駆動の採用を決めた。

ミケロッティによる美しく整ったボディ

エンジンはトライアンフ・スピットファイア譲りの1.3L 4気筒で、最高出力は61ps。ウェブスターは、これをフロントへ縦に積んだ。トランスミッションと一体化して。

スタイリングを担当したのは、巨匠ジョヴァンニ・ミケロッティ氏。2000とイメージが重なる、美しく整ったボディが描き出され、1300は1965年に発売される。ロングホイールベースで、イタリアンな雰囲気のヘラルドとは大きく異なる新世代といえた。

トライアンフ1300(1965〜1970年/英国仕様)
トライアンフ1300(1965〜1970年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

今回お招きした1300は、ポール・グロブナー氏が所有する1969年式。優雅なボディラインは、向上心を持つような大人へ理想的といえた。短いトランクリッドや装飾要素の少なさに、好感が湧いてくる。

内装もモダン。チルト(上下)とテレスコピック(前後)方向に、ステアリングコラムは調整できる。メーターパネルには、警告灯がずらりと並ぶ。ダッシュボードをウッドパネルが飾り、リアシートには可倒式のアームレストが備わる。

特徴が異なる2種へ分離した1300

当時の自動車雑誌、CAR誌は「サイズを抜きに、高級感と車内の広さ、動力性能を兼ね備えたクルマを、これ以上安く英国で購入することは難しいでしょう」。と称えている。1300の価格は、796.12ポンドからだった。

グロブナーに印象を尋ねる。「初めて乗った時は、快適さに驚きました。ブレーキが弱く集中力と予測力は必要ですが、良く走り小回りも利き、普段使いも大丈夫です」

トライアンフ1300(1965〜1970年/英国仕様)
トライアンフ1300(1965〜1970年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1967年には、更なる性能を求める声へ応えるべく、ツインキャブレターで76psへ強化された1300 TCが登場。その頃、3年後のアップグレードへ技術者は向き合っていた。

ここで、混乱が生じる。1300は、特徴が異なる2種へ分離したのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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