【英国流マッスルカーたち】初代TVRグリフィス オースチン・マリーナ2600ほか 前編

公開 : 2021.06.20 07:05

4.7L V8の初代TVRグリフィス

筆者が思うに、マッスルカーのエンジは最高出力重視ではなく、低回転域から中回転域の巨大なトルクが重要。大きく重く、少しダルそうに回転して欲しい。軽快に高回転域まで吹け上る必要はない。

不足ないパフォーマンスを求めてレッドラインまでキリキリ回すのではなく、ストレスなく悠々と加速するべきだ。排気量は3.0L以上でシリンダー数は6気筒以上が、過去の例からの目安かもしれない。

サンビーム・タイガー(1964年/英国仕様)
サンビーム・タイガー(1964年/英国仕様)

もちろん後輪駆動。4気筒や前輪駆動のマッスルカーなんて、聞いたことはない。カブリオレではなく、メタルの固定ルーフが基本だ。

2シーターのスポーツカーは、マッスルカーには入らないように思う。とはいえ、サンビーム・タイガーやMGB GT V8、MGCなどは、英国ではかなりマッスル。でも、ACコブラは少し違うだろう。

こう考えていくと、フォード製の4.7L V8エンジンを搭載した、初代TVRグリフィスなどは忘れてはいけない。最高速度249km/h、0-97km/h加速5.7秒を誇る、俊足な2ドアクーペだった。

1967年にローバーはP5BにV8エンジンを搭載したが、どちらかといえばベントレーS3やシルバー・シャドー寄り。ブレーキもコーナリングも、悪くない性能を得ていた。

ルーツ・グループの傘下にあったサンビームとは別に、ハンバーというブランドも、クライスラー社製のスモールブロック・エンジンをインペリアルに載せている。

3.8LでMTのジャガーMk2

1959年から1967年にかけての、3.8LでMTのジャガーMk2も、ある種の英国流マッスルカーだったとはいえそうだ。1960年代が終わる頃には、ブラウンズレーンの役員は軽くスポーティなモデルではなく、重く上質なサルーンの方を向くようになってしまった。

デイムラーのマジェスティック・メジャーも、マッスルカー側にあるだろう。ターナー社製の4.5LヘミヘッドV8エンジンを載せ、最高出力223ps、最高速度193km/hを実現していた。

ジャガーMk2 3.8(1959年/英国仕様)
ジャガーMk2 3.8(1959年/英国仕様)

威厳あふれる英国車として、独自のマッスルカーらしさがある。もし軽量なボディが与えられていたら、一層鋭いロケットダッシュを得ていたはず。

英国でマッスルカーを意識するようになったのは、フォードがエセックスと呼ばれる3.0LのV型6気筒エンジンを1966年にリリースしてからだろう。興奮を誘うユニットではなかったが、モダンで力強いトルクが自慢。小型で多くのモデルに搭載可能だった。

フォード製ということで安価で信頼性は高く、部品の供給体制も安定。軽くはなかったものの、全長が短くレイアウトも容易。純正のままでもパワフルで、Mk IVのゾディアックにもピタリと収まった。

このユニットを利用し、ジャガーEタイプを追い回せるマーコス3リッターが誕生。TVRやギルバーン、リライアントなど、多くの小さな自動車メーカーにも採用された。

この続きは後編にて。

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