【優雅さを増した3代目】R107型メルセデス・ベンツSL 300と350、500を乗り比べ 前編

公開 : 2021.07.18 07:05

一度味わってしまうと、抜けられなくなるというメルセデス・ベンツSL。R107型への憧れを募らせた英国編集部は、3台の乗り比べに興じました。

時間が経つほど売上の伸びたR107

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1960年代、メルセデス・ベンツの技術者が完璧を求めて仕上げたW113型SL。通称、パゴダルーフ。まだその頃は、次期モデルとして長寿命のR107型へ発展するとは、誰も予想していなかっただろう。

3代目として開発されたR107型は、1971年から1989年にかけて生産された。音楽業界でいえば、ジミ・ヘンドリックス最後のアルバムの翌年から、ディーバのさきがけ、カイリー・ミノーグの華々しいデビューまでをカバーしたモデルだ。

レッドのメルセデス・ベンツ300 SL、シルバーの500 SL
レッドのメルセデス・ベンツ300 SL、シルバーの500 SL

不思議なことに、時間が経つほどR107の魅力は増していった。年間の販売台数はデビューから15年後にピークを迎え、2万314台に達している。18年のモデルライフで製造された数は、通算23万7287台。そのうち15万6000台は北米へ輸出されている。

富裕層と呼ばれる人口が少なく、ステータスシンボル的なモデルが少なかった時代だ。選択の幅が限られていたことも、多く売れた理由だろう。

エレガントで実用的。グラマラスなスタイリングに、オープン2シーターという華やかさが共存する。メルセデス・ベンツの品質が確固たる信用を掴んでいた時代に、多くの努力なしで順調に売りさばけた。

2代目よりボデイはロングでワイド。車重は増加したが、動的性能は妥協せずに済むよう、SLとして初めてV8エンジンを搭載している。

初期の350 SLでも充分に速く、0-97km/h加速は8.0秒、最高速度は206km/hを達成。モデル後期では排気量が増やされ、225km/hまで2シーターのメルセデス・ベンツを加速させた。

装甲車と呼ばれるほど安全で堅牢

ただし、スペック上では日産240Zやロータス・エラン+2S 130に圧倒的な差を付けるほどではなく、5.7km/L前後の燃費はジェンセン級に悪い。英国では5600ポンドで売られ、V型12気筒のジャガーの約2倍。フェラーリ・ディーノより150ポンド高かった。

全体の仕上がりを鑑みると、価格には納得できたといえる。安全で文明的で、ハードトップも載せられる高級オープン2シーターだ。ダイムラー・ベンツAGは、まさに裕福な顧客が欲しいと思う2ドア・グランドツアラーだと判断した。

メルセデス・ベンツ300 SL(R107型/1980〜1989年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ300 SL(R107型/1980〜1989年/英国仕様)

パワーステアリングやATは当然の装備。量産車としては他に例を見ないほど、高水準の組み立て品質や耐久性も備えていた。スポーツカーという特徴は、さほど強くない。先代のパゴダルーフは、ユーザーがこのコンセプトに共感していることを証明していた。

R107型では、1970年代に強化された衝突安全性や環境規制に対応。高い耐衝撃構造を備え、一部の間からはパンツァヴァーゲン、装甲車と呼ばれるほど。車重が重くなりすぎたからではない。

V8エンジンには述べ6種類の排気量が設定されたほか、MTを希望するドライバー向けに2種類の直列6気筒もラインナップされた。実際は、多くの280や300にもATが組まれたのだが。

300 SLクーペを手掛けたダイムラー・ベンツの伝説的エンジニア、ルドルフ・ウーレンハウトの息のかかった最後のSLでもある。彼がテスト走行を行ったのだから、優れたクルマへ仕上がるに決まっている。

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