【英国市場に挑戦したアメ車たち】クライスラー・ネオン AMCペーサー 後編

公開 : 2021.08.07 17:45

第二次大戦後、北米への輸出で命をつないだ英国車。一方で英国市場へ果敢に挑戦し、破れていったアメ車も少なくありません。英国編集部が一部をご紹介します。

AMCペーサー

text:Simon Hucknall(サイモン・ハックナル)
photo:C&SC/GM/Chrysler(クライスラー
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1992年のハリウッド映画、ウェインズ・ワールドに登場したことをご存知かもしれないが、AMCペーサーは1975年に英国で発売されたモデル。ニューモデルとしてのタイアップ出演というわけではなかった。

2ドアのハッチバックボディを持ち、エコノミー・カーとしてアメリカでは売り出された。しかし大西洋を超えると、ペーサーの完成度の甘さが顕著に浮き彫りとなった。

AMCペーサー(1975年)
AMCペーサー(1975年)

英国価格は5413ポンドで、フォード・カプリ3.0より1900ポンド近くも高い。しかも3.8Lもある直列6気筒エンジンの最高出力は96ps。5.7km/Lという燃費の悪さが、追い打ちをかけた。

ボディサイズは、アメリカでは小さかったのかもしれないが、英国では充分以上。4370mmの全長は、4ドアサルーンのフォード・グラナダと同等。1955mmもある全幅は、ロールス・ロイス・シルバーシャドーに匹敵した。

左ハンドル車として、助手席側のドアが大きめに作られていたが、左側通行の英国では都合が悪かった。下手に駐車すると、ドライバーが降りられなくなることも。結果、英国で売れたペーサーはごくわずかな台数に限られている。

マニアな小ネタ:英国仕様のペーサーは、ステアリングホイールとコラムとの間にチェーンを挟み、右ハンドル車としていた。80km/hもスピードを出さずとも、ステアリングホイールの感覚が乏しいことは想像に難くない。

AMCランブラー・レーベル・ステーションワゴン

アメリカのステーションワゴンは、1967年当時の英国にとって新鮮なチョイスになりえたのだろうか。大きなランブラー・レーベル・ステーションワゴンが、保守的なトライアンフ2000や、レトロなシトロエンDSサファリといった選択肢に加わっていた。

英国の代理店が輸入したランブラー・レーベル6のステーションワゴンは、2.4m近い奥行きと幅1.5mもある広大な荷室を備えていた。リアシートを折りたたみ、テールゲートの下半分を倒せば、一層巨大な荷室も生み出せた。

AMCランブラー・レーベル・ステーションワゴン(1967年)
AMCランブラー・レーベル・ステーションワゴン(1967年)

AUTOCARでは、1967年にAMCランブラー・レーベルへ試乗。「1.5t以上の車重にも関わらず、充分以上のパフォーマンスがあります」。として評価している。

エンジンは3.8Lの直列6気筒。最高出力157psで、最高速度151km/hを達成できていた。トランスミッションは3速ATだ。

充実装備のランブラー・レーベル・ステーションワゴンの英国価格は、2131ポンド。トライアンフ2000エステートより675ポンドも高かったものの、競合ブランドのステーションワゴンや、メルセデス・ベンツ230と比べると安かった。

マニアな小ネタ:パワーステアリングはとても軽い。しかしロックトゥロック6.5回転というスローなレシオ設定で、英国の道路環境では、ドライバーの腕のトレーニングになったはず。

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