【なぜ復活?】ポータブルナビのマーケット スマホ全盛時代に、何が起きているのか

公開 : 2021.08.11 06:45  更新 : 2021.10.18 23:45

ポータブルナビ(PND)の市場に異変が。一強とされるパナソニック「ゴリラ」のマーケットに、JVCケンウッドが「ココデス」を投入。何が起きているのでしょう。

ケンウッド 本気の新機種を投入

text:Hajime Aida(会田肇)
editor:Tetsu Tokunaga(徳永徹)

スマートフォンに使い慣れた人にはあまり馴染みがないかもしれないが、今から10年ほど前に一世を風靡したカーナビゲーションがあった。それがPND(ポータブル・ナビゲーション・デバイス)である。

ポータブル液晶TVのようなスタイルにナビ機能を備えたことで汎用性が高く、使い勝手も良いことで大人気となり、当時は多くのメーカーが参入したほどだ。

かつては、ソニー、ガーミン、パイオニアも積極的に製品を送り出していた国内ポータブルナビ市場。近年は、パナソニック「ゴリラ」の一強だったが、ケンウッドが新製品「ココデス」の投入を発表した。
かつては、ソニー、ガーミンパイオニアも積極的に製品を送り出していた国内ポータブルナビ市場。近年は、パナソニック「ゴリラ」の一強だったが、ケンウッドが新製品「ココデス」の投入を発表した。    宮澤佳久

しかし、その人気も長くは続かなかった。スマートフォンの登場がその流れにストップをかけたのだ。

PNDも初めは加速度センサーを搭載した測位精度の高さをウリにしていたが、徐々に身近な存在として普及するスマートフォンを上回るメリットを打ち出せなくなってしまう。そうした状況もあり、今となってはパナソニック「Gorilla(ゴリラ)」など数機種が残るだけになってしまっている。

そんな矢先、ケンウッドがPND「ココデス」を登場させたニュースを聞き、驚かずにはいられなかった。

なにせ、ラインナップは大画面9型モデルのEZ-950をはじめ、7型モデルのEZ-750、5型モデルのEZ-550の3モデルと充実。加速度センサーや3Dジャイロセンサーを装備するなどして測位能力も高めている。さらに逆走検知やゾーン30対応などへの対応やオプションでバックカメラに全機種で対応するなど安全性にも配慮した。

つまり、それだけ力の入ったモデルとして「ココデス」は誕生しているのだ。

スマホに押されっぱなしのPND市場に、そこまでして改めて参入する意図はどこにあったのだろうか。

PND 古くなった紙地図との共通点

「ココデス」を発売したケンウッドの商品企画担当者は、「すでにPNDが爆発的な台数が売れるわけでもなく、残存利益獲得の状況に入っていることは承知している。しかし、他社の状況を見ると少ないながらも一定数を販売しており、カー用品で幅広いラインナップを目指す弊社としてはここを埋めておきたいと考えた」と話す。

この意図を理解するカギが、「ゴリラ」のユーザーアンケート結果にある。

パナソニック「ゴリラ」は、昨年モデルより一軒一軒の住宅の形・道幅まで表示できる市街地図を全国すべてのエリアで実現している。業務用車両のユーザーを見込んだ機能である。
パナソニック「ゴリラ」は、昨年モデルより一軒一軒の住宅の形・道幅まで表示できる市街地図を全国すべてのエリアで実現している。業務用車両のユーザーを見込んだ機能である。    神村聖

これまでの傾向として「ゴリラ」ユーザーの約9割が50代以上で、全体の4分の3が買い換え需要だったという。これはいわゆる紙地図を買い替えるようにカーナビを買い替えるユーザー層が一定数は存在することを裏付ける。

一方、装着車両を調査した結果ではスズキ「エブリィ」、スバル「サンバー」、トヨタ「ハイエース」など商用車での利用者も上位に入る。

元々、PNDは業務用として使う需要があり、そこに必要なのは一軒ずつ表示できる市街地図。ゴリラがそれを全国すべてのエリアで実現しているのもそうした需要を見込んでのことだ。

そして、もう一つ面白い結果がある。

なんと、装着車両に輸入車御三家である「BMW」「VW」「メルセデス」での利用が目立つのだ。これは何を意味しているのだろうか。

記事に関わった人々

  • 宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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