【英仏のプライド戦】ルノー16 オースチン・マキシ 5ドア・ハッチバックを比較 後編

公開 : 2021.08.21 17:45

アレック・イシゴニスが設計した最後の量産車

ステアリングホイールの位置は、今では特に問題を感じない。反応は正確で軽い。コーナーを攻めてもボディは殆ど傾かず、前輪駆動のメリットを示すようにボディをフロントタイヤが引っ張る。

低速では跳ねるような乗り心地だが、高速では質感が良くなる。でも、相互接続されたハイドラガス・サスペンションに期待するほどの洗練度ではないだろう。

オースチン・マキシ1750(1968〜1980年/英国仕様)
オースチン・マキシ1750(1968〜1980年/英国仕様)

走行時の安定感や快適性は、ルノーの方が一枚上手。エンジンは滑らかに回転し、どのギアでも有効に使える。コラムシフトの操作性は軽く正確で、耐久性も驚くほど高い。決して速くはないが、スポーティーに走りたいとも思わせる。

エンジンはトルクがあり粘り強い。ルノー16には自然で自由に乗れる雰囲気がある。車内は5速で走るマキシより、4速で走る16の方が少し静か。5速に入れたまま、周辺の道をうろつくこともいとわない。

気を良くしてコーナーへ高速で侵入すると驚くほどボディロールし、予想以上の不安感が伴う。だが、しっかり路面を掴み続ける。激しいスラローム走行でもしない限り、落ち着きは失われないだろう。

ステアリングホイールは、マキシより少し重め。76歳のアレンが所有する普段使いのルノー16の方には、電動パワステを後付けしたらしい。

オースチン・マキシは、初代ミニを生み出したアレック・イシゴニス卿が設計した最後の量産車。急速に変化する時代の中で、ブリティッシュ・レイランド(BL)社がファミリーカー市場で勝利を掴む、切り札といえるモデルだった。

完成度と重要度で勝るルノー16

小型車を発明したイシゴニスは、大型車に負けない喜びを得る手法を知っていた。1968年のオースチン・マキシ1500にも、薄められながらも残されていた。

フェイスリフトを受けた1970年以降は不具合の多くが修正され、マキシは新しい名前で呼ばれてもおかしくない内容だった。1980年以降に与えられた、マキシ2を名乗って良かった。

ホワイトのオースチン・マキシ1750と、ダークブルーのルノー16 TL
ホワイトのオースチン・マキシ1750と、ダークブルーのルノー16 TL

BL社が賢明にイメージチェンジを図り、より魅力的なデザインを与えていたら、実用的なマキシは一層多くの家族に迎え入れられていただろう。発売当初、欠点を知った英国人は同等の価格で買えるルノー16を選ぶしかなかった。

1974年には、約6万4000台のルノー16が英国で売れている。だがオースチン・マキシも、12年間のモデルライフで41万2121台が生産された。1970年代後半のモデル末期でも、年間3万台近くが売れている。

実用性に気付いた家族は、オースチン・マキシを選ぶようになった。目論見通りの販売台数は得られなくても、ルノー16の英国製代替モデルとしての機能は果たした。

この2台で、より高い完成度と重要度を持つのはルノー16だ。明確なミッションを掲げた技術者が設計し、優れた経営陣が目標達成を可能とした。フランス政府の要望に応えるカタチで。

1945年からしばらくの期間、フランスの国有企業だったルノー。国有化で導かれる結果が必ずしも悪いモノではないことを、小さな16が証明したのだった。

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