【MGB GTで830kmを走る】スコットランド人気の観光ルート ノースコースト500 後編

公開 : 2021.09.11 17:45

璧な状態のMGB GT

部の港町、ロッキンヴァーで昼食を取る。NC500の縮図を観察できる町だ。ガソリンスタンドの道路脇で談笑するバイカーたち。小さなスーパーマーケットでは、観光客が地元住民に混ざって買い物をしている。

NC500は、南フランスのようにグルメの楽しみはない。しかし事前に調べれば、カイルスク・ホテルのような隠れた名店にも出会える。

MGB GT Mk2(1970年/英国仕様)
MGB GT Mk2(1970年/英国仕様)

英国全土で長く続いたロックダウンは、観光業界には大打撃となった。いくつかのホテルは廃業してしまった様子。エントランスにはゴミが溜まり、無人のレストランには植木鉢や雑草が野放し状態だ。

東へ進路を変え、廃墟のアードレック城を過ぎ、ノッカーン・クラッグ国立公園を目指す。なだらかな山脈に低い雲がかかり、彼方へ道が続く。南に下りアラプールへ入る手前に、COVIDの感染状況を示す看板が立っていた。思わず現実に引き戻される。

MGBは数日間、とても快調に走った。日に日に調子が良くなるようだった。エンジンオイルの補充も必要ない。状態は完璧。

さらに南へ走り、グルイナード湾からグルイナード島を眺める。英国政府が進めた北スコットランドの政策によって、無人島も多く生まれた。1942年の炭疽菌実験の影響もあり、グルイナード島は今も静まり返っている。

1881年、グルイナード島の人口は6人だった。第二次大戦が始まると、秘密裏に動物実験が実施された。島全体が汚染されてから48年後、安全が取り戻されたらしい。もとの所有者へ、当時500ポンドで売り戻されている。

ここだけの冒険が味わえるNC500

総長830kmに及ぶNC500だから、どこかの区間に絞って走りたいと考えるドライバーもいるだろう。 それなら北スコットランド西部の町、シールダイグとファーンモア、アップルクロスを結ぶ道は、外さないでいただきたい。

最初は森の中だが、すぐに海岸を望む丘陵地帯へ変わり、地球最果ての地に辿り着いたような体験ができる。海の向こうには、ラッセイ島の影を望める。

MGB GT Mk2(1970年/英国仕様)
MGB GT Mk2(1970年/英国仕様)

アップルクロスの町は想像以上に混雑していた。早々に退散し、ビラ・ナ・バー峠へMGBを走らせる。 ここの景色も壮大だった、と書きたいところだが生憎の曇り空。反対側のトルナプレスの町へ降りるまで、視界は数mという悪さだった。

途中、レザー・グローブをはめた男性が運転するジャガーXFとすれ違う。上半身が裸のランナーとも。

NC500は少々混雑した人気の観光ルートだ。ドライブを楽しみたい人にとっては、イライラする事もあるだろう。でも、ここだけの冒険が味わえる。

紙の地図を広げて書き込みをし、複雑な道をアナログに辿るのも一興。小説に出てくるような町や、北スコットランドの歴史との出会いもある。給油で集落に立ち寄るだけでも楽しい。

空いた道と壮大な景色を存分に享受するには、早起きが欠かせない。スタート地点のインヴァネスの町へ戻る頃には、走破した達成感と、旅の終わりの悲しい現実とに包まれるだろう。

かつての政策によって、北スコットランドの歴史は変わってしまった。しかし2015年のNC500の制定は、大きな転機となった。NC500を走るなら、たっぷり時間を用意して欲しい。短くても5日間、可能なら10日くらいがベストだと思う。

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