【トヨタの目論見どおり?】ヴェルファイアがアルファードに完敗したワケ

公開 : 2021.08.26 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

かつてアルファードより売れていたヴェルファイアが今や廃止の危機に。ここまで差がついたワケを解説します。

発売当初は優勢だったヴェルファイア

執筆:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
編集:Taro Ueno(上野太朗)

クルマの売れ行きは概して浮き沈みが大きいが、この中でもとくに注目されるのがヴェルファイアだ。

アルファードの姉妹車で、基本的には同じクルマなのに、売れ行きは大きく異なる。

トヨタ・ヴェルファイア
トヨタ・ヴェルファイア    トヨタ

2021年1~7月の1か月平均登録台数は、アルファードが9392台、ヴェルファイアは751台だ。

ヴェルファイアの売れ行きは、アルファードのわずか8%にとどまる。なぜ姉妹車同士でここまで販売格差が生したのか。

今までの流れを振り返ると、初代ヴェルファイアは、2代目アルファードの姉妹車として2008年に登場した。

この時点ではアルファードはトヨペット店、ヴェルファイアはネッツ店が扱っている。

ヴェルファイアのフロントマスクは、アルファードに比べると派手で、販売店舗数もネッツ店が多い。そのために登録台数もヴェルファイアが上まわった。

発売の翌年に当たる2009年には、ヴェルファイアは1か月平均で4136台、アルファードは2467台を登録している。ヴェルファイアはアルファードの1.7倍売れていた。

この後もヴェルファイアはアルファードよりも好調に売れて、2015年に現行型へフルモデルチェンジされた。

2016年の1か月平均登録台数は、ヴェルファイアが4082台、アルファードは3089台だから、この時点でもヴェルファイアが多かった。

マイチェンで形勢逆転 決め手は顔面

ところが2018年1月にマイナーチェンジを実施すると流れが変わった。

アルファードの仮面のようなフロントマスクにメッキを散りばめて、存在感が大幅に強まっている。

マイナーチェンジ後のアルファード(上)とヴェルファイア(下)
マイナーチェンジ後のアルファード(上)とヴェルファイア(下)    トヨタ

その結果、2018年にアルファードは1か月平均で4901台を登録して、販売店舗数が少ないのにヴェルファイアの3054台を上まわった。

これが自動車ビジネスの難しさだ。機能は両車ともに共通で、当時は装備内容や価格も同じだったのに、フロントマスクのデザイン次第で売れ行きが大きく左右された。

一般的にライバル車との販売競争に勝った理由、あるいは負けた理由は、推定はできても特定するのは難しい。デザイン、機能、価格など、いろいろな要素が関係するからだ。

それがアルファードとヴェルファイアの優劣は、両車の違いがデザインだけなので分かりやすい。

しかも販売店舗数の少ないアルファードが、ヴェルファイアの売れ行きを上まわったから、デザインの影響力は絶大だ。

クルマにとって、デザインがいかに大切かをハッキリと示す事例であった。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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